2020-01-01から1年間の記事一覧

「エビデンス」のエビデンスを知るための本

今回は遂に2か月も間が空いてしまった。オンライン講義の仕込みに時間をとられたせいもあるし、某大学での非常勤でベイズ統計学のオンライン講義を引き受けてしまったせいもある。押し詰まっているが、なんとか年内にもう一つエントリーをしようと思う。 今…

ゼータの伝記そして歳時記

前にエントリーから、ずいぶん間が開いてしまった。 今回は、黒川信重さんの『零和への道ーζの十二箇月ー』現代数学社を紹介しよう。 零和への道 ―ζの十二箇月― 作者:黒川 信重 発売日: 2020/08/22 メディア: 単行本 タイトルにはちょっとのけぞるだろうが、…

「現実」はすべて統計的

今回は、『現代思想』の最新号「統計学/データサイエンス」で巻頭対談しているので、そのことを宣伝するとともに、少しだけ統計学についてエントリーしようと思う。 現代思想 2020年9月号 特集◎統計学/データサイエンス 作者:小島寛之,三中信宏,赤平昌文,稲…

オイラー素数生成式の思い出

今回は、「オイラー素数生成式」について、出会いと再会を書いてみたい。 その前に音楽の話を一つだけ。前回のエントリー、 ネコの物語が、こよなく好きだ - hiroyukikojima’s blog で、最近、音楽ユニット・ヨルシカが好きだということを書いたが、そのヨル…

ネコの物語が、こよなく好きだ

今回は、いつもと趣向を変えて、ネコにまつわる物語のことをエントリーしようと思う。どうしてそんなことを思い立ったかというと、ネットフリックス配信のアニメ『泣きたい私はネコをかぶる』を最近、観たからだ。 映画「泣きたい私は猫をかぶる」公式サイト…

ルート数のダンジョン、横から見るか、上から見るか。

ずいぶん、間があいてしまったが、今回は「2次体の数論」の話、もっと簡潔に言えば、ルート数の魅力的な世界についてエントリーしようと思う。 その前に、音楽の話をちょっとだけ。 ぼくが、Tricotという日本のバンドを好きなことは何回も書いてきた。例え…

還暦すぎて初めてたどりついたリーマン・ロッホ

大学の講義が5月いっぱいまではオンラインになったため、運動不足をふせぐ目的で、毎日部屋でエアロバイクをこぐことにした。これは、東日本大震災の余震に見舞われていた日々以来、久しぶりのことだ。 バイクをただこぐのは退屈なので、音楽を聴きながら、…

高木貞治『初等整数論講義』の続きで読むべき数学書

前回のエントリーからだいぶ時間が経過してしまったが、予告した通り、小野孝『数論序説』裳華房を紹介しようと思う。この本は、整数論の本だ。そして、ぼくの個人的印象ではあるが、高木貞治『初等整数論講義』共立出版を意識して書かれた本だと思う。そし…

Tricotの無観客ライブは、本当にすばらしかった。

今回は、久しぶりに音楽のことをエントリーする。 話題は、日本のバンドTricotの無観客ライブのこと。 Tricot(トリコ)は、女性3人と男性1人からなるJ-popのバンド。ボーカルの中嶋イッキュウさんは、ジェニーハイで有名になったので、Tricotももっともっ…

多項式版フェルマーの大定理の証明

今回も前回の続きで、河井壮一『代数幾何学』培風館の紹介をしよう。前回のエントリー、 今頃になって、なんでか代数幾何が面白い - hiroyukikojima’s blog を読んでない人は、先に読んでおいてくれるとありがたい。ついでに、黒川信重さんの新著『リーマン…

今頃になって、なんでか代数幾何が面白い

今回は、お正月から読みつないでいる代数幾何の教科書について紹介しよう。読みつないでいるのは、河井壮一『代数幾何学』培風館だ。 現代数学レクチャーズ B 5 代数幾何学 作者:河井壮一 出版社/メーカー: 培風館 発売日: 1979/11 メディア: 単行本 この本…

京都で宇沢先生の思想についてレクチャーします!

来週、京都のお寺で、宇沢先生の思想についてのレクチャーをする。具体的には、 『宇沢弘文を読む』 日時:2月17日(月) 17:00~19:00 場所:法然院 京都市左京区鹿ケ谷御所ノ段町30番地 登壇者:小島寛之(帝京大学 経済学部 教授) 詳しくは、以下のサイト…

WEBRONZAに新しい論考を寄稿しました!

WEBRONZAに、新しい論考を寄稿した。タイトルは、 数学女子に育てたければ、女子校に入れよ - 小島寛之|論座 - 朝日新聞社の言論サイト というものだ。 このブログでは、主に、経済学や数学の理論の紹介、専門書・啓蒙書に対する書評、小説・映画・音楽のレ…

映画『ジョーカー』はすごかった!

年末に家族で映画『ジョーカー』を観に行った。メディアやツイッターで評判を見ていて、気になっていたので、思い切って観に行ってみたのだ。 行ってよかった。いや、行くべき映画だった。 あまりのすごさに打ちのめされた。 昨年観た映画(テレビやレンタル…