内田麻理香『理系なお姉さんは苦手ですか』

 最近はまってしまったバンドは、「ねごと」という女子バンド。いんやー、リピートしすぎで、頭の中で自動的に演奏してくれるようになった。なんか、聴いてきた音楽にとても共通性を感じるのに、彼女たちのこの勢いはなんなんだろう。よくわかんないけど、アジカンとか、ストレイテナーとか、バンプ・オブ・チキンとか、その辺をコピーしてきたのかな、と思えるんだけど、なるほどそれらをこう昇華するか?みたいな曲の連続。ヴォーカルもギターも良いのだけど、なんといってもスゴイのはリズム隊。やろうとしてることがカッコヨすぎる。デビューアルバムはまあ及第点ぐらいだったのに、それから1年弱で発表されたセカンドアルバム「ex Negoto」では、あまりに大きな進化を遂げている。、20歳の成長の勢いというのはまっことスゴイものだ。何よりのけぞったのは、彼女たちのライブのときの登場の音楽がフランク・ザッパの「カソリック・ガールズ」だということ。これは、ザッパの「ジョー・ズ・ガレージ」という傑作アルバムに入ってるんだけど、「なぜザッパ?」「なぜ、ジョー・ズ・ガレージ?」と、ザッパ命のおぢさんリスナーとしては、そりゃ、もう気が気でなくなってしまうわね。
 そんなことはどうでもよく、今日は、今週土曜日にぼくが参加するトークショーのネタ本である内田麻理香『理系なお姉さんは苦手ですか?』技術評論社を紹介しておこう。やっと、手元に届いて、一気に読了したのだ。

理系なお姉さんは苦手ですか? ?理系な女性10人の理系人生カタログ?

理系なお姉さんは苦手ですか? ?理系な女性10人の理系人生カタログ?

この本は、理系出身で、理系っぽい職業についている女性10人に内田さんがインタビューした本。ただ、みなさんがイメージしている「理系女子」とは、たぶん大きくズレていると思う。登場女性の職業には、サイエンスイラストレーター(科学絵を描くプロ)とか、科学未来館インタープリター(科学館の解説員のプロ)とかお花コンサルタント(花屋さんに科学的にアドヴァイスするプロ)など、非常に変わったものが多く含まれるのだ。とにかく読むだに、「へぇ〜、理系が活かせるこんな職業があるのかあ」と、その多種多様性に素直に驚いてしまう。この本の一番のメッセージは、理系って一口にいったって、世界は無限に広い!、ということだろう。これらの理系プロのお姉さんたちが、女子高生のときどんなだったか、理系に進んだ経緯は何か、大学ではどんな生態だったか、そして今の職業についたいきさつを赤裸々に語ってくれる。タイトルからわかるように、本書は「理系女子を畏れ奉って一歩退いてしまう男子」に向けてセールスしようとしているが、むしろ、理系に行こうかどうか迷っている女子高生や、理系に進んだのは間違いだったんじゃないか、という後悔が発症し始めている女子大生にお勧めしたい本なのだ。
さて、それ以上のことについては、トークショーのほうで、内田さん本人とあれこれお話したいと思う。きっと、本には収録できなかったエピソードも披露されるのではないかな、と推測している。今週の土曜日に下記の要領で開催されるので、ぜひともお越しください。

『理系なお姉さんは苦手ですか?』発売記念
内田麻理香先生×小島寛之先生トーク&サイン会
日時:8月20日(土)(19:30〜〈19:00開場〉)
場所:ジュンク堂書店 池袋本店4階カフェ
定員:40名
入場料:1000円(ワンドリンク付き)
お申し込みはジュンク堂書店池袋本店1Fサービスカウンターまで(電話:03-5956-6111)。

ぼくは、疑似性理系から真性文系に変態した身なので、理文両方の立場からお話できると思う。あとは、数学者となる夢を諦め、経済学者として蘇生した身として、「こうやったら、数学を理解できるようになる」「こうやったら数学と仲良くできるようになる」という点について、経験を踏まえて、参加者のみなさんにアドヴァイスしたい、と思う。あと、「数学って、理系の学問とは言い切れないんちゃう?」みたいな実感についてもね。
 実は、ぼくは、理系の学部(東大理科1類→理学部数学科)に在籍したのだけど、理系女子という人たちとはめぐりあわなかった。当時は第二外国語でクラス分けをしていたのだけど、ぼくはフランス語を選んだ。理由は、「数学科に行きたいならフランス語」という情報が40パーセントを占め、「フランス語クラスなら女子がいる」という情報が残る70パーセントを占めた。クラスの連中に聞いたから、後者の理由でフランス語を選んだものが120パーセントだった。で、クラス結成前に(性別のない)クラス名簿を受け取ったとき、その中に「あんり」という名前があったので、思惑が当たった!と躍り上がったのだが、残念ながらそれは男の名だった。クラスのみんなが集まったときに確認しあったが、当の「あんり」くんを除けば、クラスの全員が理系女子「あんり」に期待に胸を高鳴らせていたのだった。ぼくらは、それから二年間、理系男子クラスで過ごすことになった。高校までずっと男女半々で過ごしてきたぼくには、とても奇異な風景だったけど、それはそれで楽しかった。
 数学科に進学したときも、女子はいなかった。そもそも当時の数学科には、数年に一人程度しか女子が進学しなかったのだから確率的には当然の帰結だった。
 そういう意味で、ぼくは学部生活では理系女子というのにはお目にかからなかった。目にするようになったのは、塾でバイトをするようになってからだ。その塾は、後に有名になる理系専門塾で、理系女子大生を何人か先生として採用していた。ってゆーか、ぼくが積極的に採用した。当時ぼくは中学部門の主任をしていたが、高校部門が男子講師ばかり採用するのに反して、女子講師を積極的に採用した。それはぼくが理系女子ファンだった(っていうかある種の幻想を抱いていた)ことも大きな理由だけど、理系女子の理系男子にはない独特の個性的感覚としなやかさで中学生を指導してもらうのは、子供たちにとって有益だと思ったからだ。(男子学生は、迷いもなくイケメンを優先的に採用した。イケメンがいれば、女生徒は自然と集まる。女生徒が集まれば、その10倍は男生徒は集まる。そういう戦略だったのだ。はい、これぞビジネスだね)。
 ぼくが採用した理系女子は、理学系と医学系が多かったので、本書に登場する理系女子とは少し雰囲気が違った。でも、本書を読んでみて、やはり何か、共通性・類似性を感じる。言語化するのは難しいけど、「媚びでないキュートさ」「俺様でない自負心」「打算的でない率直さ」みたいなものを備えていると思うだ。それは、本書をお読みいただけば、そして、トークショーにお越しいただければ、リアルに感じ取っていただけるのではないだろうか。