上原ひろみのライブをミタ

昨日、上原ひろみのライブを観てきた。
あまりのスゴサに、鳥肌がたって、そして、涙が出てきた。
あんな演奏に遭遇することは、そうそうない。とんでもないテクニック、とんでもないパッション、そして、とんでもないイマジネーション。これがジャズなのか、と本当に唖然とするしかなかった。プログラムが終わったときは、国際フォーラムの全員が、お約束ではなく、自然とスタンディングオベーションになった。ぼくも自然に立ち上がってしまった。そうせざるを得なかった。彼女の、あの体力を消耗する渾身の演奏を浴びれば、そうしないではいられない。
MCがまた、すばらしかった。「みなさんに、このような楽しい時間をいただくには、眉間にしわができるほど、がんばらなければならない」と言った。つまり、自分も楽しく、そして観客から力をもらえるようなライブをするには、日常的な、手を抜かない、辛い辛い修練が必要、ということだろうと思う。彼女は、単なる天才ではなく、その天性の才能にさらなる磨きをかけるような、不断の努力の天才でもあるのだ。あの鬼気迫るトーンコントロール、正確なリズム、爆発するテンションは、才能を超えた痛々しい練習で培われるのだろうと思う。
思えば、彼女を初めて見たのは、調布のちいさなライブハウス(2011-02-17 - hiroyukikojimaの日記参照)。あのときも、そのすさまじさに引き込まれてしまったが、今回のライブはその比ではなかった。
いやあ、スゴイものを観てしまった。自分はもちろん、専門の学問や文筆において、ああいう天才ではなく、ほど遠いけれど、でも、あんな風にがんばりたいと思った。そういう勇気をもらったライブであった。
今回のライブは、今年に出た最新アルバム「VOICE」からの演奏だったが、これは奇跡のアルバムだと思う。リズム隊のアンソニー・ジャクソンサイモン・フィリップスがめちゃくちゃすばらしい。こんなみごとなコラボに出会うことはめったにないだろう。音楽の奥行も広がっている気がした。モダンジャズジャズロックばかりではなく、スイング、デキシー、ラテン、クラッシック、現代音楽などの影響も感じられる。彼女は昨年、参加したスタンリー・クラークのアルバムでグラミーを受賞している。今回のこのアルバムも、(素人のぼくにはきちんとした評価はできないにしても)、十分にグラミーの資格があると思う。二年連続のグラミー受賞という快挙を成し遂げてほしいものだ。

ヴォイス(初回限定盤)(DVD付)

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