YUIの武道館ライブに2日とも行ってきた

いやあ、YUI2011−2012 Cruising〜 How Crazy Your Love の武道館ライブに、昨日今日と二日間行ってきた。YUIの昨年のライブは、あれこれがんばって、ある方法でゲットしてアリーナ中央の10列目で観るというアリエナイ経験をしたが、(詳しくは、遂に、YUIのライブに行ってきた。 - hiroyukikojimaの日記参照)、今年は、つれあいと友人に手伝ってもらって、抽選に挑戦して、なんとか二日とも手に入れることに成功した。両方ともスタンド2階席だったけど、二日目の今日は、ステージの真正面どんぴしゃだったので、ずっと双眼鏡でYUIさまのご尊顔を鑑賞し続けることができた。もちろん、彼女は美人なのだけど、ぼくにはそれよりも、彼女が歌うときに幼い少女のような泣き顔になるのがたまらなく好きなのだ。(こういうと変態扱いされそうではあるが)。
 今回のツアーは、豪華客船でクルージングしている観客にバンドが演奏を聴かせる、というコンセプト。豪華客船といえば、シチュエーション的にあまりにタイムリーなので、そこはかとなくおかしかった。しかも、船長(ライブの案内役)は、ルー大柴だし。そして、YUIのライブは、彼女にMCをさせる工夫がいろいろなされているのだけど、(何か演出がないとうまくMCできないのかもしれない)、今回は、近くの漁船から無線が入り、その相手とだべる、という趣向になっていた。昨日は、オリラジ藤森で、今日は、はんにゃの二人。やはり、プロの芸人だと、YUIの口下手をうまくカヴァーして、彼女の魅力を引き出すことができる。さすがだと思った。
 今回の選曲と曲順は、考えられる限りにおいて、最高のものだったと思えた。アルバム「How Crazy Your Love」の曲はほとんど演奏し、(「Rain」は前回のツアーでやったから、あえてはずしたのだろう)、昔の名曲「LIFE」や「Good-bye days」や「CHE.R.RY」なども惜しげもなく披露してくれたのでファンにはこたえられない。ただ、全体として感じたのは、今回のライブは、根本的に、以前と異なる面持がある、と いうことだった。うまく言えないのだけれど、YUIの前回までのライブの歌い方は、「自分のために歌う」という感じがしてならなかった。もちろん、いうまでもなく、観客を楽しませるために歌ってはいるのだけど、それは前提としても、彼女は「自分に向けて歌っている」ように思えたのだ。彼女は、歌うことで、自己存在証明をしている。生命を刻んでいる。そんな気がしてならなかった。彼女が挑み、そして乗り越えたいのは、自分の中に抱えたナニカであるように思える。それは、ある種の上昇志向であり、「てっぺんを取る」ということなんじゃないか、と思う。そして、それが、その全身全霊さが、観客の心を打つのではないか、と。
でも、今回のライブは、そういった歌い方とは根本的に違っている気がしたのだ。つまり、今回の彼女は、生まれて初めて「人のために歌っている」のではないか、と。どうしてかは、いうまでもない。震災にショックを受け、心を痛めたからだろう。多くのアーティストがそうであるように、YUIもまた、震災を目撃して、人生感、音楽感が根本から覆ったのだと思う。最新のシングル曲「Green a.live」の歌詞に、このことが端的に表れている。だって、「正義って何だろう?」「憎しみは何処へゆくの?」「神様は誰の味方をするのだろう?」だからね。今回のライブで感じさせられる、慈しみや思慕の情感は、やはり、YUIの変化の結実だと思われる。
 ただ、「How Crazy Your Love」の中に、「YOU」という曲があって、これは特別な曲だと思う。シングルではB-sideだったのだけど、(ほんとはダブルA-sideだった可能性もあるが、とりあえずB-sideということにして)、アルバムに収録されたうえ、さらには非常に重要な位置に置かれた曲になっている。ライブでもアンコールでバンドとして演奏する最後の曲に設定されていたから、やはりこの曲は、YUIにとって特別な曲なのだろう。この曲は、歌詞を表面的になぞると単なる失恋の歌に聞こえるかもしれないが、ぼくはそうじゃないと思っている。失恋のことを歌っているのだとすると、つじつまのあわないところが数か所ある。(いや、歌なんだから、つじつまがあわなくたっていいんだけど、そこはそれとして)。「彼女を選ばなかった」のは、そこらのカレシなんかではなく、「音楽の神様」なのではないかと思えるのだ。そして、「YOU」というのは、彼女が嫉妬を抱く誰か、あるいは「てっぺん」そのものだ。音楽の神様は、YUIではない、誰かを選んだ。ぼくには、そういう失意と嫉妬と、そして、再挑戦の志を歌った曲に聞こえるのだ。だから、この曲だけは、今回のライブの(慈しみという)コンセプトとは異なる曲なのだと思う。
今日のライブでは、終わりのほうで、「泣きそうです」と言ったので、ちょっと心配していたが、やはり、彼女は最後の最後に感情を抑えられなくなってしまった。その「YOU」という曲で、歌詞が一か所飛んでしまった。単なるミスかと思ったけど、そうではなかった。なぜなら、そのあとにメンバーなしで、アコギ一本で歌った「It's happy line」と「TOKYO」では、完全に、泣きながら歌っていたから。東京の武道館公演2daysが終わりに近づいて感極まってしまったのかもしれないし、観客の声援にぐっときてしまったのかもしれないし、あるいは、前述したようなナニカが心に去来したのかもしれない。本当に、YUIは、歌詞を間違えないし、トーンコントロールも完璧なだけに、こんなふうに歌を途切らせてしまうのは、よほどのことだろうなと思った。もちろん、ぼくも一緒に感極まってしまった。観客全員が涙を流したと思う。こういうのが、アーティストとの人間的なふれあいができるライブ、というものだ。YUIのライブは、単なる音楽ショーではなく、大げさにいうなら、彼女の人生と触れること、彼女の人生に関わることなんだと思う。それが、彼女の音楽の魅力であり、彼女自身の魅力であるのだ。ありがとう、YUI

HOW CRAZY YOUR LOVE(初回生産限定盤)(DVD付)

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