バンド・エコシステムをクアトロで観てきた

前回の渋谷サイクロンに続いて(エコシステム・イン・渋谷サイクロン - hiroyukikojimaの日記)、今日は、渋谷クアトロでエコシステムのライブを観てきた。
今日は、Flipというガールズ・ポップ・バンドがプレゼンツのイベントで、ガールズ・ポップが3バンド出た。前回は、エコシステムだけ観て帰ったけど、今日は、三つとも観た。大きな理由は、女子バンドだから、ということだけど、今日は、ちょうど執筆のはざまだったことも大きい。開放感の中で、三杯も酒を飲んで、演奏もふんだんに楽しんできた。はい、そこでこれ読んで、コラコラ、とか思ってる編集者、そうですよ、あなたがゲラをちゃんと送ってこないからエアポケットになったんす。ありがとね。君のおかげで女子バンドを堪能できたスね。
んでもって、酔っ払ってるので、支離滅裂になるからブログを書くべきじゃないし、酔っ払ってネットに書き込みをしない、とあれほど誓ったのに、今日はそれを破って書いてしまおうと思う。
今日も、エコシステムは、最初の登場だった。曲目は、前回のサイクロンと全く同じ(と思う)。要するに、「sola」→「境界線」→「コーヒー中毒」→「NO MAKE」→「夜の街」→「月夜のnet」(CDTVのオープニング曲)→「ジレンマ」(アニメ『銀魂』のテーマ曲)、という順。演奏はすばらしかった。何がって、やっぱ、クアトロは音響がいいね。今日は、壺坂さんの声が非常にクリアに聞くことができた。彼女の声には、一つだけ心配があって、それはアルバムJeanを作ったときと、今回のシングル「月夜のnet」とでは、声が違ってるのか、ということだった。ヴォーカリストはよく、酒で声を潰すことがある。彼女もそうなってしまってるのか、と少し案じていた。もちろん。「月夜のnet」自体の歌唱はすばらしいので、そうなったならなったで、それなりの道はあると思うのだけど、「Jean」でのあの声がとても好きなので、そうなったら、ちょっと残念だと思っていた。でも、たぶん、杞憂だったと思う。今日は、音響もよく、壺坂さんの声は思った通り、胸を締め付けられるタイプのものだった。

月夜のnet

月夜のnet

そればかりではない。PAが前回よりマシなおかげか、彼女たちの音作りが、ずっとよくわかった。結構、凝った音を作っている。とりわけ、紅一点男子の荒井さんの「音」はすばらしい。プログレ臭いというか。どこに原点があるんだろうか。そして、あの変なギターはどこのメ−カーだろうか。
でも、今日のお目当ては、パーペキにベースの後藤さんだった。前回書いたように(エコシステム・イン・渋谷サイクロン - hiroyukikojimaの日記参照)、彼女とは通路でニアミスを起こしているので、笑い、今日は彼女の演奏をじっくり観たかったのだ。いんやー、かっこいいベースだった。派手というわけではないんだけど、ほんとにわきまえたプレイだと思う。ああいうベースはめっちゃ好みである。
そ、そして、最もぼくにとって重大な発見だったのは、ベースの後藤さんの歌っているときの顔は、「泣き顔」なのだよ。ばばんばん! ぼくは、女子の「泣き顔」を限りなく愛する男なのだ(YUIの武道館ライブに2日とも行ってきた - hiroyukikojimaの日記参照)。今夜は、完全に、後藤さんに惚れた。
エコシステムの音楽の何が好きか、というと、もちろん、歌詞もコード進行も好きなんだけど、一番なのは、「リズムの切り替え」なのだ。ぼくは、たぶんフランク・ザッパを聞くようになってから、リズムがずっと一定だと飽きてしまう体質になったのだと思う。どんなに巧くても、どんなに泣けても、リズムが同じままだと心が離れてしまうんだね。エコシステムの曲は、そこんところがなかなかよく仕組まれていて、一曲の中で何度かリズムの切り替えが行われるようになっている。そこがものすごく好きなのである。
実は、先週の日曜日に、吉祥寺のシルバーエレファントというライブハウスで、Enigmatic Driveというジャズ・ロックのバンドを観て来たんだけど、このバンドもリズムの切り替えの激しいバンドである。このバンドを、ぼくは現在、日本で一番のジャズロックバンドだと思っている。(何せ、他は一つも知らないからね)。ドラムは、田中栄二というとんでもなく巧い人が叩いている。エコシステムは、もちろん、このバンドとは目指すところが違うんだけど、考えていることに共通性があると思う。
リズムの切り替えのバンドで、昔、とにかく好きだったのは、ネッズ・アトミック・ダストビンというイギリスのバンド(ネッズ・アトミック・ダストビン - Wikipedia)だった。このバンドはツインベースという珍しい編成で、一曲の中で、かならずリズムを切り替える。このバンドは、バンド名からわかる通り、原発をテーマにしているのだと思う(勘違いの可能性アリ)。このバンドの曲で、「GREY CELL GREEN」という曲があって、ぼくの拙い英語力では、歌詞は次のように聞こえるのだ。すなわち、「お前らは、それは、自然の中に存在する、っていうけど、そうじゃない、それはオレたちの中にあるんだ。そして、それは、お前らの腹黒い欲望のせいなんだ。その欲望が露わになる前に、お前らは逃げたじゃないか」みたいな感じ(あくまで、個人的な解釈。深読み、誤読の可能性大)。この歌詞を聴いた当時、90年代だけど、その頃は、絵空事のように思っていた「放射性物質が身近なそこら中に散乱する」という事態が、この日本で現実に起きてしまうとは、予想もしなかった。あぜんとし、暗澹たる気持ちになるばかりである。
今夜のエコシステムのライブで、ただ一つ、恨みが残るとすれば、前回と完全に曲目も曲順も同じだったこと。せめて、一曲ぐらい差し替えてくれればよかったのに。ぼくとして、大好きな曲「remember」を生で見てみたかったぞよ。
今夜も、エコシステムはアウェーな状態だった。だって、みんな、FlipのTシャツ着たり、タオルを首に巻いたりしてたからね。ぼくも、エコシステムのタオルを持ってはいってたんだけど、このアウェー状態では首に巻く勇気が出なかった。でも、待ち時間のときに、周りのFlipファンの男どもが、「エコシステムも、楽しみなんだよね」と口々に語ってたから、きっとお目当てではあったのだろう。エコシステムの演奏が始まると、やっぱり、みんな徐々に引き込まれていくのがわかって嬉しかった。大昔に、レッドツェッペリンのライブで、前座のグランドファンクレイルロードが完全に食ってしまった伝説があるが(ふ、古い)、それに類したことがきっといずれ起きるに違いない。
二番目に出たオレスカバンドも、メインのFlipもよかった。オレスカバンドの「自転車」という曲は、出だしのフレーズで思わずほろっときてしまって、CDを衝動買いした。実は、今、拙著の絵本『パラドクス事件簿』シリーズを再発しようとしていて、そのリライトをしているんだけど、主人公の小学生たちのキャラ変えを試みている。それで、いろいろと「青春もの」を探索してるわけなんだけど、(物語を書くのは難しい - hiroyukikojimaの日記参照)、オレスカバンドの「自転車」の歌詞は、そのヒントになるものであった。聴いてよかった。メインのFlipは、なんといっても、ドラムがかっちょよかったす。
 さて、でも、本当に一番書きたいのは、次のことなのだ。
実は、今夜もまた、ベースの後藤さんと遭遇したのだ。ロビーに出たら、彼女が物販をやっていた。それで、今夜は、酔っ払っている勢いもあり、サインをねだってみた。快く、サインをしてくれた。そのとき、「次は武道館で観たいですね」って言ったら、しばらく間があいて、(きっと、すぐには意味が悟れなかったんだろう)、そして、急に顔を上げて、「じゃ、それまでいつも来てくれよな」と、男言葉で切り返してくれた。ぼくは、それでもう、完全ノックアウトされた。ぼくは、女子の男言葉にめっぽう弱いのだ。だから、拙著『無限を読みとく数学入門』の小説には、男言葉をしゃべる美少女が出てくる。そして、今、改訂しているパラドックス事件簿』の主人公の女子も男言葉をしゃべる。そんなぼくだから、今夜は、このうえない幸せな気分で眠れる、というわけなのだ。