赤い公園のライブのこと、森内二冠の就位式のこと

先週は、ぼくにとって楽しみなイベントが二つあった。一つは、バンド・赤い公園の出演するライブ、もう一つは、森内俊之二冠の竜王就位式であった。
赤い公園」というガールズバンドに惚れ込んでしまったことは、前回(三角関数も進化する - hiroyukikojimaの日記)書いた。その赤い公園が出演するということで、先週の金曜日に六本木に新しくできたEXシアターというところで開催されるガールズバンドのライブを観に行ったのであった。
そのライブの出演者は、赤い公園以外は、「ねごと」と「スキャンダル」だ。
ねごとは、デビュー盤がすごく好きだったので、一度ライブを観てみたいと思っていたバンドだ。そして、スキャンダルは、男なら文句なく誰だってみたいバンドである。もちろん、ぼくもその例外ではない。したがって、この3バンドの組み合わせは、ぼくにとって、楽園のような企画なのだ。
演奏順序は、赤い公園→ねごと→スキャンダル、となっていた。3バンドの年齢構成はほぼ似たり寄ったりなので、バンドとしてのキャリアの順かな、と想像した。つまり、→の方向に進むと「キャリアが長い」、ということ。
ここで、ぼくなりに、→の方向性に別の見方を提示してみたい。→方向に進むと、「ポップ度が高くなる」と思う。そして、逆方向に進むと「マニアック度が高くなる」と思う。さらに言うなら、→方向に進むと、「アイドル度が高くなる」と思う。そして、逆方向に進むと「マニアック度が高くなる」と思う。もう一歩突っ込むなら、→方向に進むと「華やか度が高くなる」と思う。そして、逆方向に進むと「マニアック度が高くなる」と思う。(冗談だからね、笑)
いんやー、スキャンダルは初めてライブを観たけど、メンバーの美人ぶりにはぶっとんだ。テレビでは幾多と観たことがあるんだけど、チェックのミニスカとか、制服ファッションとかに目を奪われて、ご尊顔を吟味したことがなかったのだ(ぼくとしたことが、とほほ)。今回は、後方の椅子席のチケットを取ったこともあって、オペラグラスを持参した。それも、バードウォッチングに使うようないかついオペラグラスである。きっと、周りのお客さんたちには、「異様なスキャンダル・ファンのおやぢ」という目で見られていただろう。初見で申し訳ないっす。
それがまあ、スキャンダルの4人は、「それぞれに異なるタイプの美人」なんだよね。それこそ、アニメに出てくる(例えば、けいおん!)4つの別種の美少女、みたいな感じだ。これなら、コアなファンがそれぞれのメンバーについてても不思議じゃない。オペラグラスのおかげで、人気の秘密が理解できた。全員がかわいいけど、ぼくとしては、ドラムのRINAにノックアウトされた。叩いているときの表情が、すんごいセクシーなんだよね。
 ねごとも、想像通りの、すばらしい演奏だった。とりわけ、ぼくは、彼女たちのアルバムでは、リズム隊が好きだったんだけど、ライブを観てみて、ベースとドラムの良さが確信に変わった。とりわけ、ドラムはすごく巧いし、かっちょいいと思った。
 さて、女子バンドネタで盛り上がりすぎたので、ここでいったん、森内二冠の竜王就位式の話を差し挟もう。
森内二冠とは、一昨年に、編集者を介してお知り合いになり、名人就位式には一昨年と去年と、二回招待していただいた。今回も、森内二冠の招待で参加できたのである。式は、帝国ホテルで行われたんだけど、名人就位式とは、少し雰囲気の違う祝宴であった。一番の違いは、各ランクの優勝者も一緒に表彰されるので、いっぺんに7人の棋士を観ることができるのが嬉しい。とりわけ今回は、前から言葉を交わしてみたいと思っていた佐藤康光九段と接触することができて嬉しかった。なぜかというと、ぼくの旧友で棋士になった人と佐藤九段が親しいから、直接、お話してみたかったのだ。佐藤九段は、彼の名前を出すと少し驚いたご様子で、とてもフレンドリーにお話をしてくださった。行った甲斐があった。
それにしても、ここ数年の森内二冠の強さは、尋常ではないように思える。現在は、7つのタイトルを、森内二冠、羽生三冠、渡辺二冠で分け合っているが、森内二冠と羽生三冠はともに43歳という年齢である。昔だったら、棋力が落ちてしまって仕方ない年齢だ。なのに、その年齢の二人がタイトルを5つも保持している、というのは驚くべきことだと思う。
このことの理由について、ぼくなりに考えた。つまり、将棋も今は、「若い知能であることが最重要」というわけではないのではないか。これは、昔、森内名人の就位式に参加してきますた。 - hiroyukikojimaの日記のエントリーで書いたことだけど、要は「森内将棋は、数学者の発想に近い」という仮説をさらに裏付けてくれることと言っていい。
数学も、基本的には、若い人の活躍する学問である。実際、フィールズ賞を受賞するような研究は若いうちに成された。でも、最近はそうとも言えなくなってきているように思える。数学も、単なる「瞬発力的な閃き」だけでは難問を解決することはできず、「いろいろな道具を総合的に動員する洞察力」とか、「広大な道のりを一つずつ踏破する執念」などが必要なように思える。換言すれば、「深淵にして、広大な、哲学的信念」が大事に違いない、ということ。例えば、アンドリュー・ワイルズを主役した現代数論の研究者たちが、その総力でフェルマー予想を解決したのが良い例。ワイルズは、解決時は、40代だった。この解決には、数論全体の総合的な動員が必要だった。単なるワンショットの閃きではできない仕事だったのだ。森内二冠の将棋が40代にして、再度開花したのは、この数学界で起きている動向と似たものが背景にあるように思える。(ぼくは将棋は指さないし、何もわかっていないので、あくまでいいかげんな憶測だけど)。
 さて、最後に赤い公園の話に戻ろう。
二度、ライブを観て、ぼくは彼女たちの才能に確信を持った。本当にすごいライブ・パフォーマンスだと思う。結成数年で、二十歳そこそこで、あの領域に達するとは全く驚くばかりだ。特に、ギターの演奏が、通常じゃない。巧い運指をする人は幾多といるだろうけど、あのような個性的なギタープレーをする人は知らない。ある意味、とても不思議な演奏なのだ。そして、あの楽曲のすごさ。CDを何度も聞いているうちに、非常に細かいところでとても綿密なことをやっていることがわかってくる。リズムの切り替えとか、ノイズの入れ方とか、キメが通常よりワンテンポ早く行われるとか。その溢れるようなイマジネーションには、ただただ感嘆する。この非凡な発想を継続できれば、きっと、後生に語り継がれるバンドに成長することだろう。ぼくは、しばらくは、赤い公園とTricotを追っかけようと思う。2バンドあると、スケジュールが体力的に大変だけどね。

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