yuiとユイのすばらしいコラボ〜フラワーフラワー『色』

 最近、入手したミニ・アルバム、フラワーフラワーの新譜『色』がめちゃめちゃすばらしい。

色(初回生産限定盤)(DVD付)

色(初回生産限定盤)(DVD付)

このアルバムは、アマゾンに予約注文しておいたので、店頭販売の前日の2月17日に届く予定だったのだが、「入荷できていないので発送が遅れる」というメールが入って、がっかりした。代わりに、Tricotの新譜『E』は届いた。あまりにフラワーフラワーを楽しみにしていたので、Tricotの新譜を予約注文していたことも、フラワーフラワーと同日発売だったということも、すっかり忘れていた。紛らわし日に発売しないでほしい(冗談です)。このTricotの新譜では、サポートのドラマーがBoboさんになっていて、驚いた。Boboさんは、Miyavi(当ブログでもABC予想入門 - hiroyukikojimaの日記などで触れている)のサポートをしているドラマーで、自分が好きな二つの音楽に接点ができたのは嬉しいことではあった。Tricotの新譜については、またいずれ、触れるとして、今回はとにかくフラワーフラワーのほうだ。
 アマゾンからフラワーフラワー『色』が届いたのは、予定から3日ほど遅れてからだったけど、逆に今度はこれがベストタイミングになった。その日は、かなり凹むできごとがあった日だったからだ。凹んだ気持ちには、この音楽はとても染みた。正確に言うと、CDの曲そのものというより、おまけでついているDVDのほうだった。
DVDは、映画『リトルフォレスト』のPVとなっている。『色』はこの映画のテーマ曲なので、曲に合わせて『リトルフォレスト』の場面が編集されてついているのだ。この映画は、一人の女の子が、農村で自給自足の暮らしをするのをたんたんと描いた物語だ。多少の近隣住民も出てくるけど、基本は、主人公の農作業と、自分の作物を料理して食べるシーンで構成されている。春・夏・秋・冬と4つのパートから成り立っており、各季節に1曲ずつ曲がつけられている。
リトル・フォレスト 夏・秋 [DVD]

リトル・フォレスト 夏・秋 [DVD]

普通なら、全く興味がわかなった題材なんだけど、凹んでいたからじっくりと見てしもうた。そして、あまりの良さに、リピートして、一日に五回ほど見てもうた。もちろん、曲もめちゃくちゃ良い出来である。フラワーフラワーのデビュー作『実』(当ブログでは、フラワーフラワーの音楽に魂が揺さぶられた - hiroyukikojimaの日記に感想をしたためた)も、とんでもなく凄い曲の集合体なんだけど、それとは違った意味で、すばらしい曲群であった。『実』よりは、昔のYUIに近い曲調と歌い方だと思う。昔のYUIのファンは、こっちのほうになじむかもしれない。
おまけDVDで、癒やされて、凹んだ気持ちから立ち直ることができたぼくは、どうしても気になるので、映画『リトルフォレスト』の夏秋篇をレンタルしてきてしまった(冬春篇は、2015年、2月14日から公開されている)。それは、農村の暮らしにぐっと来たからではまったくない。主人公を演じている橋本愛さんのファンだからだ。
実際、おまけPVも、橋本愛さんのファンでなかったら、いくら凹んでてもすぐには見なかった可能性が高いと思う。橋本愛さんだ、ということでがぜん、見る気満々、というか見ないでは気が済まなくなったのである。
 橋本愛さんは、缶コーヒーのCMに女子高生として出演してた頃から気になってた女優だったけど、NHKの朝ドラ『あまちゃんで、猛烈なファンになった。その後、NHKの数学ミステリー『ハードナッツを見て、自分の中の最高位女優の座についた(『ハードナッツ』については、当ブログのドラマ「ハードナッツ」がめっちゃ面白い - hiroyukikojimaの日記のエントリーも参照されたし)。『あまちゃん』では、能年玲奈さん演じる女子高生・天野アキちゃんの親友となる女子高生・足立ユイちゃんを演じた。つまり、映画『リトルフォレスト』では、yuiとユイのコラボということになるわけで、これはこたえられない取り合わせである(ちょっと無理があることは承知でゆっちょる。笑)。
あまちゃん』の主役二人は、みごとなキャラの書き分けだったと思う。アキは、都会では周囲の同世代とうまくいかずに、母親の実家の岩手の漁村での暮らしになじむのだが、実ははっちゃけてポジティブな内面を持っており、その後に、東京に戻ってアイドルの道をばく進する。他方、ユイは、岩手から脱出してアイドルになる、という野望を持っているが、その実、とてもメンタルが弱く、ネガティブな心を秘め、家族思いのいくじなし女子なのである。それで結局、ユイは、最後まで岩手を出ることができずに終わる。このユイのキャラクターは橋本愛さん以外、ぼくには考えられない。あの「何かを抱えた」独特の感じは、簡単には演じられないと思う。だからこそ、ドラマ終了後、大晦日の実際のNHK紅白歌合戦で、ついにユイが待望の東京に初めて出てきて、アイドルとしてステージで歌う、というNHKの粋な演出は、もう落涙・落涙だったのだ(ほんとに)。
 今回の映画『リトルフォレスト』でも、その、橋本愛さんの「何かを抱えた」感じがとてもよく表現されている。この映画でも、主人公は、東京で男と暮らして失敗した経験から、故郷に逃げ帰った、という設定になっている。
 この映画の良さは、農村暮らしを不要に美化してない点だと思う。「過酷な自然との調和」とか「魂のふるさと」とか、そういう価値観の押しつけみたいなものがほとんどない(ように感じられる)。主人公は、冷蔵庫も使えば、電気・ガスもあるし、ジューサーやミキサーも利用する。こじゃれたパスタも作る。着ている服も、もちろん、ゴージャスではないけど、どことなくおしゃれなものだ。描かれるのは、「農作物や木の実などをどう工夫して美味しく食べるか」というシーンが多い。そういう意味で、農作業の知的面にスポットが当たっているのかな、とぼくなどは思う。もちろん、各季節の田んぼ・畑・森林は、非常に美しく撮影されている。
 この映画を見ていて思い出されたのは、ベルナルド・ベルトリッチのいくつかの作品だ。例えば、『暗殺のオペラ』や『1900年』では、イタリアの農村での営みがたんたんと描かれる。それが、とても農村とは思えないような、美しい光景と人々だった。『リトルフォレスト』には、これに通じるある種の「人工的な自然美」「人知を介した農村感」があるように思う。
 とは言っても、ぼく自身は、自然とか、農村とか、農作業とか、自給自足とかにはまったくと言っていいほど憧憬も興味もない。今回、盛り上がっているのは、あくまでyuiの率いるフラワーフラワーと橋本愛さんの取り合わせの妙からにすぎない。興味がないのは、ぼくが完全な都会っ子だったからか、というとそれは違うのだ。実は、ぼくは、東京生まれの東京育ちだけど、子供の頃に、ど田舎の農村でけっこう長い期間、暮らしたことがある。今となっては理由はよくわからないが、たぶん、妹の出産時期に母親の実家に預けられていたんじゃないか、と思う。母親の実家は、栃木にあって、最寄りの駅まで車で小一時間はかかるような僻地だった。米以外に、野菜やカンピョウ、イチゴなどを栽培している地域だった。それは1960年代だったこともあって、『リトルフォレスト』で描かれている生活よりも、ずっと原始的で不便なものだった。食生活も、ずっと貧しかったように記憶している。もちろん、自然はみごとだったし、それを「美しい」と評価するなら、それはそうなのかもしれない、と思う。でもぼくは、ああいう生活は二度とごめんだ、という感想を持っている。(もちろん、その地も、今は近代化して、『リトルフォレスト』の世界よりずっと便利なんだろうとは推測されるけど)。
 まあ、それはともかく、最後にこれだけは、声を大にして言いたい。『リトルフォレスト』の美しい自然、みごとな四季はいい、美味しそうな素朴な料理もいい、でもね、橋本愛さんみたいな女の子は絶対いないと思うぞ〜(笑)。ぼくが暮らしたことのある栃木のど田舎にも、かわいい女の子はそれなりにいた記憶がある。でも、橋本愛さんのような水準の女子は、皆無だったぞ。あたりまえのことではあるが。
 『リトルフォレスト』冬春篇は、現在公開中だけど、ぼくはたぶん、劇場には見に行かないと思う。なんとなく、映画館でみたい誘惑にはかられないからだ。いずれ、DVDになってから見ようと思っている。まあ、これもわからない。何度も映画館に足を運ぶはめになるかもしれない。衝動というのは、いつどう訪れるか、自分にも予想がつかないからだ。ちなみに、フラワーフラワー『色』には、映画では使われていない演奏部分(曲間のつなぎの曲)も収録されているので、映画のDVDやブルーレイを買うつもりの人も、アルバムを買って損はない。