来週、ベイズ統計の教科書が刊行されます!

来週、ぼくの最新刊が刊行される。それは、ベイズ統計学の教科書で、タイトルは『完全独習 ベイズ統計学入門』。タイトルからわかるように、ダイヤモンド社から2006年に刊行した『完全独習 統計学入門』の続編にあたる本である。企画は、この本が刊行された直後に立てられたが、書き上げるまでに相当な時間が経過してしまったので、本当に感慨深い。アマゾンにやっと書影が出たので、リンクを張ろう。

完全独習 ベイズ統計学入門

完全独習 ベイズ統計学入門

いい感じのカバーデザインになってるよね。笑。
この本は、言うまでもなく、ベイズ統計を指南する教科書。これまで、ベイズ統計の教科書はいろいろ出版されており、名著もいくつかあるけど、この本はそれらとかなり様相が違う本だと自負している。目次を見ていただくだけで、それは推察できると思う。以下である。

『完全独習 ベイズ統計学入門』目次

第0講 四則計算だけで理解するベイズ統計学――本書の特長
   
第1部
速習! ベイズ統計学のエッセンスを理解する
 
第1講 情報を得ると確率が変わる――「ベイズ推定」の基本的な使い方
 
第2講 ベイズ推定はときに直感に大きく反する(1)――客観的なデータを使うときの注意点
 
第3講 主観的な数字でも推定ができる――困ったときの「理由不十分の原理」
 
第4講「確率の確率」を使って推定の幅を広げる
 
column ベイズはどんな人だったか
 
第5講 推論のプロセスから浮き彫りになる――ベイズ推定の特徴
 
第6講 明快で厳格だが、使いどころが限られる――ネイマン・ピアソン式推定
 
第7講 ベイズ推定は少ない情報でもっともらしい結論を出す――ネイマン・ピアソン式推定との違い
 
第8講 ベイズ推定は「最尤原理」に基づいている――ベイズ統計学とネイマン・ピアソン統計学の接点
 
第9講 ベイズ推定はときに直感に大きく反する(2)――モンティ・ホール問題と3囚人の問題
 
column 「ツキ」についての2つの法則
 
第10講 複数の情報を得た場合の推定(1)――「独立試行の確率の乗法公式」を使う
 
第11講 複数の情報を得た場合の推定(2)――迷惑メールフィルターの例
 
第12講 ベイズ推定では情報を順繰りに使うことができる――「逐次合理性」
 
第13講 ベイズ推定は情報を得るたびに正確になる
 
column ベイズ復権させた学者たち
 

第2部 
完全独習! 「確率論」から「正規分布による推定」まで
 
第14講 「確率」は「面積」と同じ性質を持っている――確率論の基本
 
第15講 情報が得られた下での確率の表し方――「条件付確率」の基本的な性質
 
第16講 より汎用的な推定をするための「確率分布図」
 
第17講 2つの数字で性格が決まる「ベータ分布」
 
第18講 確率分布図の性格を決める「期待値」
 
column 主観確率とは、どんな確率か
 
第19講 確率分布図を使った高度な推定(1)――「ベータ分布」の場合
 
第20講 コイン投げや天体観測で観察される「正規分布
 
第21講 確率分布図を使った高度な推定(2)――「正規分布」の場合
 
補講 ベータ分布の積分の計算

青色で強調したところを見てもらえばわかるように、この教科書は、ベイズ統計の「技術的な側面」と「思想的な側面」にスポットを当てて書かれている。それが、従来の教科書と異なるところである。その両方にスポットを当てるには、「初等的に」書かざるを得ない。難しい数学を土台にしてしまうと、読者には「技術面」も「思想面」もどちらも伝わらなくなる。したがって、本書では、基本的に四則計算だけで理論が展開される。確率記号さえ、本の三分の二くらいまでは登場しないのである。微積は「補講」以外には出てこない(単にはしょっただけだけど)。順列・組み合わせの公式も出てこない(こちらは、ベイズ推定にとって本質的に重要でないから使わない)。
 ベイズ統計というのは、ベイズ逆確率という計算を使って、「結果から原因を推定する」方法論である。もちろん、スタンダードなネイマン・ピアソン統計もそういうものだが、原理的にはかなり異なっている。そもそも、「結果から原因を推定する」ということは、演繹論理である数学だけでは不可能だ。どこかに「思想」をしのばせないとできないことだ。ベイズ統計における「思想」を一言で言えば、それは「主観確率〜確率は人の心の中にある主観である」ということになる。本書では、その「思想」の部分を、従来の教科書よりもずっと強い形で明るみに出しているのが特徴である。
 そういう書き方をしたのは、ぼくが現在、経済学の中において、ベイジアン意思決定理論の研究をしているからに他ならない。ベイジアン意思決定理論というのは、主観確率がどのように構成され、どのように操作でき、どのように顕示されるかを解き明かす分野だ。そういう意味では、本書は、ぼくの面目躍如の本と言っていい。主観確率を「強く」押し出す、という特徴は、従来のベイズ統計の本にはあまり見られない。多くの著者は、「ベイズ統計のスネの傷」だと思っているからかもしれない。ぼくは、ベイジアンだから(笑)、全く逆に考えている。主観確率を使うからこそ、ベイズ統計はすばらしい操作性と柔軟性を備えることができているのだと確信している。だからこそ、ベイズ統計の「思想的側面」に主役級を演じさせたのである。
 今回の販促はここまでとし、本が刊行された頃に、内容について詳しくピーアールしたいと思う。

完全独習 統計学入門

完全独習 統計学入門