Aimerのライブは、誠実さと斬新さの同居する奇蹟のライブだった

一昨日、女性ボーカリストAimer(Aimer Official Web Site)のライブに行ってきた。
Aimerは、ぼくが現在、もっともはまっているアーティストだ。(「魔法少女まどか☆マギカ」に打ちのめされた - hiroyukikojimaの日記とか、弱いゴールドバッハ予想が解決されていたらしい - hiroyukikojimaの日記とかにエントリーした)。最近では、Aimerのアルバム(と、ときどきTricotのアルバム)しか聴かなくなってる。

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一昨日のライブでは、武道館を1万3千人のファンが埋めていた。これは普通のキャパより多いはず。というのも、ステージをアリーナ中央に作り、360度すべての方角の客席に客を入れたからだ。ぼくは、追加で売り出された最後列の立ち見席で観た。立ち見でステージが見えるのか、みんな立ったらどうなるのか、と心配だったけど、なんということか!アンコール以外は、すべての客が着席のまま聴いていた。きっとこれは彼女のライブの決まりなのだろう。いまどき、珍しいしきたりだと思う。なので、アンコール以外は、完全にステージを肉眼で見ることができ、大満足だった。
 いやあ、とんでもなくすごい、奇蹟のライブだった。こんなすごいライブに当たることは滅多にない。武道館のライブは、YUIの公演を超えるものはもうない(遂に、YUIのライブに行ってきた。 - hiroyukikojimaの日記参照)、と信じていたけど、そんなことはなかった。ぼくの中では、完全に凌駕してしまった。
今回のライブは、最近リリースされたベスト盤、「Blanc」と「Noir」を記念してのものだ。前者は、主にバラード的な静の曲を集めたアルバムで、後者は激し目の動なる曲を集めたアルバム。そして、ライブは、前半はBlancから後半はNoirから選曲された。そればかりではなく、BlancとNoirに合わせて、前半と後半を完全に異なるコンセプトで構成したのだ。例えば、前半のドレスは白、後半のドレスは黒。あるいは、前半はバックバンドは座って演奏、後半は立って演奏、というように。舞台の使い方も、ライティングも切り分けてあった。本当に完璧な演出だと思う。とりわけ、後半の最初の曲の「us」のところの芸術的ライティングには鳥肌がたった。インターバルの効果音とそこからつながる「us」の演奏のみごとさが、ライティングと相まって、観客の頭の中のBlancからNoirへの切り替えが完璧化される。本当によく考えられた構成だと思う。
ぼくは、ライブというのは、「アーティストに会いに行くもの」「アーティストと交友しに行くもの」と思っている。だから、アーティストの気持ちとか息づかいとか人柄とかを感じたい、というのが一番大きい。そういう意味では、Aimerという人の今がどんなで、何を感じ、どこに向かおうとしているのかがわかり、来れてよかったと思った。
 こんな周到な演出にもかかわらず、ぼくがぐっと来てしまったのは、Aimerの歌に対する真摯さとライブに対する誠実さだった。台湾、韓国、香港を含む20数カ所でパブリック・ビューイングが開催されるほどの人気のライブでありながら、いっさいの奢りも高慢さも感じられない。完璧とも言える、そして、希有な個性の歌唱力を駆使し、懸命に、切々と歌う。どの方角の観客にも気を配り、MCでは誠実に自分の気持ちを話す。舞台演出のアーティスティックと、ギャップと言えばギャップなんだけど、でも、それをコミにして、Aimerという人の人となりを感じさせるステージングだった。
 彼女は、MCの中で、「武道館は通過点の一つと考えるようにしている」というような趣旨のことを言いながら、でも、終わりに近づくに従って、だんだん何かがこみ上げてくる様子になり、アンコール最後の曲「六等星の夜」では感極まってしまったようだった。それを観て、「ああ、やっぱり、武道館は特別な箱なんだなあ」と感慨深く、彼女を心の中で祝福した。
帰りにアーティストグッズをいくつか購入した。その中の一つに、スマホケースがある。実はぼくは、まだガラケーを使っている。しかし、Aimerのスマホケースを買ったのが縁で、スマホに切り替えようと思っている。もちろん、ケースを使うために。。。
 最後に自分のことを付け足すのは気が引けるけど、是非、言わせて欲しい。
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