AimerのライブをNHKホールで観てきました

 女性ボーカリストAimer(エメと発音する)のライブを、NHKホールで観てきました。
前回のライブの感想はAimerのライブは、誠実さと斬新さの同居する奇蹟のライブだった - hiroyukikojimaの日記にエントリーし、それがいかに奇蹟の演奏だったかを書いたが、今回も、まんま奇蹟のライブだった。
前回は、武道館に360度回転するステージを作り、あらゆる方向に向かって歌うことができるようにしたが、今回はNHKホールなのでもちろん、観客は正面だけから観ることができる。その分、やはり、武道館公演よりも今回のほうが親近感のわくステージングだった。
曲目は、武道館公演とほとんどかぶらないように選曲されており、それでも遜色がないくらいすばらしいセトリだったので、彼女の楽曲がいかに名曲揃いか思い知らされる。季節がら、冬や雪や雨などにまつわる曲が中心とされていて、季節感を堪能できる曲たちだった。中でも、雨にまつわる新曲「Ref:rain」はすばらしかった。これは、最新のCDのメイン曲だ。

このシングルには4曲収録されており、ぼく自身は、前掲のメイン曲とセルフカバー「After Rain」が気に入っている。このセルフカバーは、アレンジが違うだけでこうも違う格好良さが出るものか、と驚かされた。
Aimerのライブでは、毎回、そのトーンコントロールのすごさに圧倒される。たぶん、同じ曲を同じように歌っても、他の人ではこういうふうにはならないだろう。それは、ボーカルというのが、単に旋律をなぞるだけのものではなく、声質、強弱、発音、ビブラートなど総合的な表現テクニックの所産だということを思い知らせるものだ。
彼女のライブでは、特にトーンコントロールが困難な曲の前に、彼女はいったんステージから去って少し休憩をとる演出になっている。だから、彼女がステージから消えた次の曲は(衣装を着替えることも含めて)非常に期待大となる。今回は、「冬のダイヤモンド」「us」の前にステージから消えた。そして、どちらの曲も、あまりにすばらしい演奏となった。特に前者は、アルバムでは静かなナンバーとなっていたが、ライブで聴くと情感たっぷりの切ない切ない曲であり、うるうるなってしまった。後者は、彼女の最高のナンバーの一つであり、武道館のときと同じく、すごく工夫されたアーティスティックなライティングで感涙むせんだ。
 武道館での奇蹟のライブは、ブルーレイとなって発売されている。
Aimer Live in 武道館 “blanc et noir

Aimer Live in 武道館 “blanc et noir"(初回生産限定盤)(Blu-ray Disc)

この映像作品は、武道館のライブを一曲もカットせず、MCも、アンコールの拍手の時間も完全収録しているコンプリート版であるから、Aimerに関心のある人は絶対観るべきだと思う。これは、もう、家宝級のブルーレイだ。アンコールの最後の曲「六等星の夜」のとき、彼女にしては珍しく、感極まって少し歌を崩してしまっている。オーバーダビングで修正することもできるのに、そのまま収録している。これは、このライブを完全な記録として残そうという、彼女とスタッフの意気込みを意味するだろう。
 実は武道館ライブでは、ファンの間で、Twitterにおいて多少の騒動があった。この「六等星の夜」で一部のファンがペンライトを灯したり、スマホを点灯させたりした行為に対して、従来からのファンが批判をしたことだった。ぼくは知らなかったが、彼女のライブではファンマナーとしてそういうことはしないルールらしい。
実際、「六等星の夜」という曲は、肉眼で見える最も暗い星に自分を喩えて、それを見つけ出してくれるファン(彼氏?)に感謝をする、という体裁の歌詞の曲だ。だから、武道館ライブでは真っ暗なステージの中で歌い始め、最後には上空から淡い光の星たちが降り注ぐ演出となっていた。そういう演出がなされている中でのペンライトやスマホライトは、確かに、演出を著しく損なうものとなったと思う。実際、今回のNHKホールの入り口には、ペンライト禁止の注意書きがなされていたのが、その証拠なのだろう。でも、「六等星の夜」のときに、彼女を照らし出してあげたい、というファンたちがいることも理解できないわけではない。どちらも、ファン心理としてありうるものだと思った。