今回は、最近観たテレビドラマ「ヤマトナデシコ」のことを書こうと思う。その前に、宣伝を一つ。
『現代思想』青土社の3月増刊号「現代を生きるための映像ガイド」が刊行されたんだけど、それにぼくも映画批評を寄稿してる。
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ぼくの批評のタイトルは、『ギルバート・グレイプ』が変えた「障害」への考え方、だ。この映画では、少年の頃のレオナルド・ディカプリオが知的障害のある少年の役を演じていて、それが白眉なんだけど、それと絡めて映画「くちびるに歌を」も批評した。この映画は、中田永一氏(実は、推理作家の乙一氏)のラノベ作品の映像化なんだけど、明らかに『ギルバート・グレイプ』へのトリビュートになっているので。(この二つの映画については、前に映画『くちびるに歌を』は日本版「ギルバートグレイプ」 - hiroyukikojimaの日記にエントリーしてる)。さらには、これらの映画を題材にして、経済学者としての立場から、「障害」に関する松井彰彦・東大教授のゲーム論的アプローチを紹介した(この理論については、関係性の社会思想へ - hiroyukikojimaの日記とか障害を問い直す - hiroyukikojimaの日記とかにエントリーしている)。
さて、『現代思想』の販促はこれくらいにして、テレビドラマ「ヤマトナデシコ」について書くとしよう。このドラマは、親しい二人の友人から、別個に、執拗に勧められた(強制された、と言ったほうが正しい)ので、仕方なく、笑、観てみたのだ。
でも、とても面白いドラマだったので、観てみてよかったと思う。これは、バブル期を彷彿させるCA(ドラマでは、スッチーと呼ばれているが)の婚活ドラマだ。当時に旬で結婚前の二人の女優、松嶋菜々子さんと矢田亜希子さんが主演している。男優は堤真一さんが、数学に挫折した魚屋を演じている。堤さんは、このあと、映画『容疑者xの献身』でも挫折数学者を演じているので、はまり役ということができるだろう(『容疑者xの献身』については、数学の道が閉ざされるとき - hiroyukikojimaの日記にエントリーしてる)。
「ヤマトナデシコ」には、ところどころに数学についてのネタが登場する。それが、ぼくには妙にツボでうるうるなってしまった。これについては、「やまとなでしこ」の数学というサイトで詳しく説明されている。でも、このサイトは完全なネタバレになっているので、これを読む前に是非、ドラマそのものを観ることをお勧めする。
堤さんが演じる数学者・中原欧介が数学について語る中で、最も好きだったのは、第二話に出てくる次の台詞だ(先ほどの「やまとなでしこ」の数学から引用している)。
…人が素朴に考えたりやってみたりした事は、どれもみな、ようするに、 楕円方程式とモジュラー形式を分類してどちらも同じ数だけあることを示す事だ、 とワイルスは言っています。しかし、問題は楕円方程式もモジュラー形式も無限 に存在するという事で…
2000年に放映のドラマなので、ワイルズによるフェルマー予想解決が取り上げられているのは、とてもタイムリーだと絶賛したい。しかも、楕円曲線とモジュラー形式が対応している、というのは、現在も数論の中心的標的となっているラングランズ予想そのものだから、実に勘のいいネタを選んだと思う。あと、第10話にサイバーグ・ウィッテン理論というのが出てきて(どうもトポロジーの理論らしい)、これにも興味津々になった。
このドラマを観てから、モジュラー形式と楕円曲線がどんな理屈で対応するのか、猛然と気になってきてしまった。この対応がどんなものかは、黒川信重さんの『ラマヌジャン探検』で理解していた(ラマヌジャンの正当な評価がわかる本 - hiroyukikojimaの日記で詳しく書いた)んだけど、どうしても証明を知りたくなって、次の本をダウンロードしてもうた。

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さて、「ヤマトナデシコ」に戻ると、登場人物の女性でのぼくの好みの順序は、[人妻の真理子さん(森口瑤子さんが演じてる)>矢田亜希子演じる若葉ちゃん>松嶋菜々子演じる桜子さん]、という具合になる。とりわけ、欧介に恋心を抱きながらも別の夫を選んだ真理子さんの秘めたる心はなんとなくわかる。この三人の中で、欧介を射止めるのが桜子である理由は、最終回で説得されるようになっている。要するに、欧介が数学にのめりこむことにどう向き合えるか、ということで、この女性三人は区別されるんだね。
最終回近くなって、欧介の数学での師匠にあたる黒河教授というのが出て来る。これはひょっとして、黒川信重さんのことで、数学の監修も黒川さんがしたのではないか、と思って、ご本人に問い合わせたところ、「監修はしてません」との回答だった。それで、ネットで検索をかけてみたら、数学監修について「シナリオの中園さんの友達の予備校講師」と書いている人がいた。それが本当だとすれば、その人は数学を相当ちゃんと勉強していた人だと思う。

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