来週、統計学の新書が刊行されます!

この10月上旬には、ぼくの新著が二冊、同時に刊行される。一冊は統計学の新書、もう一冊はミクロ経済学の教科書だ。いろいろな事情があって、刊行時期が重なってしまった。

というわけなので、今回は、先に刊行される統計学の新書のほうを紹介し、次回に、ミクロ経済学の教科書のほうをエントリーしようと思う。

統計学の新書とは、『難しいことはわかりませんが、統計学について教えてください!』SB新書である。

 

 この本について、ぼくにとって新しい点が二つある。第一は、ライターさんとのコラボレーションであること、第二はぼくが今まで書いてなかった統計学のアイテムを解説していることだ。

第一の点についてもう少し詳しく言うと、本書は、ぼくがレクチャーした内容をライターさんがテープ起こしをして、それを土台に物語を作り、文章を書いてくださったものである。もちろん、初稿ができたあと、ぼくが全文をチェックし、必要な部分は加筆・修正をした。部分的には全面的に書き換えてしまったところもあるくらいだ。

 ぼくがライターさんに文章を書てもらうのは初めての経験だ。これまで漫画家さんとのコラボやイラストレーターさんとのコラボはあったが、ライターさんに文章を委ねる、ということはしなかった。それは、ぼくとしては、サイエンスライターであるにしても、「文筆家」というスタンスにこだわりがあったからだ。今回、それを返上してライターさんに文章を任せたのは、一つには他の書籍企画を抱えていて、割り込みを許すわけにはいかなかったのもあるにはあるが、もう一つに、ぼくのレクチャーをプロのライターさんが形にしたらどんなふうになるか興味があったからだった。実験的にやってみようと思ったのだ。

 実際、今回の新書はぼくにとってとても新鮮なものとなった。ぼくのレクチャーから数学や統計学には素人のライターさんが何を感じ、それをどう物語るかを見ることができたからだ。さすがこれまでいくつものライティングをしてきただけあって、読みやすく、わかりやすく、面白い文章を展開してくれた。自分のアイデアがライターさんの感性を通してこのような豊かな表情を持つのか、と新鮮な気分になった。付けくわえるなら、ぼくの文章はテクニカルな内容を書いていても、独特の癖があるのだな、と再認識することになったのも収穫だった。このライターさんのような職業的な文章はぼくにはとても書けないし、やっぱりぼくはぼくの文体にこだわり続けたいと思う。

 第二点、つまり、統計学の内容について、もう少し詳しく説明しよう。

ぼくはこれまで、統計学の教科書を二冊刊行している。『完全独習 統計学入門』『完全独習 ベイズ統計学入門』(いずれもダイヤモンド社)だ。これらは読者の評価を得ることができ、前者は12万部のベストセラーに、後者もすでに5刷2万部を重ねている。前者は統計的推定としてカイ2乗分布、t分布を用いた推定方法を基本から解説し、後者はベイズ推定の原理を基本から解説している。

 この二冊で解説していない統計学のアイテムとして、多変量の推定がある。具体的には、相関分析回帰分析だ。相関分析とは、二つの量がどういう関係性にあるかを、正の相関、負の相関、無相関として分類する分析法のこと。回帰分析とは、ある量(説明変数)が他の量(被説明変数)にどのくらいのインパクトを持つかを数値で表す分析法のこと。今回の新書では、この二つのアイテムを、通常の推定(正規分布やt分布による区間推定)に加えて投入したのが真骨頂である。

とりわけ、回帰分析では、どの教科書でも必ず導入部で解説する「最小2乗法」を避けたところが新機軸である。正規方程式を経由せずに別の方向から回帰係数の公式を与えたのだ(もちろん、数学的な説明は省略したから、ごまかしと言えばそうなんだけどね)。この工夫によって、回帰分析を新書の一章の中になんとかかんとか説明を押し込むができたのである。

どういう説明かは読んでのお楽しみ(笑)。

 タイトルは例のごとく編集者さんが付けたので、大げさだし羊頭狗肉かもしれない。でも、新書で、縦書きで、物語で、という体裁の統計学の本としては、画期的な出来なんじゃないかな、と思う。是非、書店で手に取ってみて欲しい。

 

完全独習 統計学入門

完全独習 統計学入門

 

 

 

完全独習 ベイズ統計学入門

完全独習 ベイズ統計学入門