ぼくの新著、マンガ統計学が出ます!

 ぼくの新著『マンガでやさしくわかる統計学日本能率協会マネジメントセンターの刊行まであと一週間を切ったので、満を持して宣伝しようと思う。
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マンガでやさしくわかる統計学

マンガでやさしくわかる統計学

この本は、ぼくの統計学の本では、『完全独習 統計学入門』『完全独習 ベイズ統計学入門』(共にダイヤモンド社)に続く三冊目となる。統計学が専門でもなく、また、若い頃は好きでもなかったぼくが、三冊も統計学の本を書くとは、人生不思議な巡り合わせだ。統計学の面白さはどこにあるか - hiroyukikojimaの日記にエントリーしたように、ぼくは今では、統計学がとても面白く、また、ある程度統計学に近い距離にある「意思決定理論」という分野を専門としている。簡単に言えば、数学を専攻していた青年時代は、「完全無欠な演繹体系」としての数学にしか関心がなかった。それは同時に、「この生々しい現実世界」にほとんど興味がなかった、ということを意味する。そして、経済学を専攻するようになった中年以降は、「この生々しい現実世界」こそが興味の対象となり、「どうやったって不完全な情報しか得られない中での帰納体系」としての統計学に強い関心を抱くようになったのだ。
 でも、そういうふうに統計学に関心を持ってみると、世の中にある統計学の教科書に不満を持つようになった。ほとんどの教科書は、あまりに淡泊な記述をしていて、「どうやったって不完全な情報しか得られない中での帰納体系」としての統計学、という視点を強調していないからだ。まあ、統計学の教科書の執筆者たちは、「そんなことは自分で気取れ」と思っているのか、あるいはもしかすると、ぼくのような感じ方をしてないのかもしれない。だからぼくは、自分が感じる統計学の魅力と本質を伝えるような本を書きたいと思って、教科書を執筆した。
 今回の『マンガでやさしくわかる統計学は、マンガ企画ということで、前著とは異なるアプローチをしている。まず大きいのは、コラボ作品だ、という点。統計学の解説部分はぼくが書いているが、マンガのシナリオは葛城かえでさんが、マンガは薙澤なおさんが担当している。ストーリー自体は、この三人に、編集者さんと編プロのかたが加わった5人で、ああでもないこうでもないと議論して構築した。自分の意見が反映されたストーリーが、マンガとして実現していくのは、このうえなく楽しいことだった。
 前著『完全独習 統計学入門』を読んでくださったかたは、この本と今回の新著との関係に関心があろうから、それについて述べよう。
完全独習 統計学入門

完全独習 統計学入門

 『完全独習 統計学入門』は、10万部超のセールスを収めた教科書だ。実は、つい先日に、1万部増刷になった(初版部数より多いやんけ)ので、11万部超ということになる。本書が多くの読者に歓迎されたのは、「数式をほとんど使わない」という工夫をしたからだ。シグマも使わない、順列・組み合わせも、確率も使わない、使うのは、中学数学(それも、せいぜいルート)だけ、というのが数式を苦手とするけど、統計学を学びたい読者にアピールしたと思う。
 この「数式をほとんど使わない」というのは、単なる「ごまかし」のためのネガティブな戦略ではないのだ。そうしたほうが、「どうやったって不完全な情報しか得られない中での帰納体系」という統計学の思想がストレートに伝わる、というポジティブな戦略だったのである。喩えてみれば、野菜の味は調理しないで生で食べたほうがよくわかる、ようなものである。そういう発想は、今回の新著でも踏襲している。今回も、「数式をほとんど使わない」ことによって、統計学はいったい何をやっているか」を浮き彫りにしている。
 それじゃ、前著だけ読めば十分じゃないか、というツッコミをされそうだが、そうじゃないんだな。今回は、『完全独習 統計学入門』で扱っていない内容がいくつかある。例えば、「差の検定」という方法論は、当時はあまり大切とは思わず、前著では省略したものだ。新著では、これをクライマックスに持ってきた。前著を刊行したあと、実は、「差の検定」を扱えば、統計的推定を理解するための多くの項目が網羅される、と気づいた。母集団、正規分布正規分布の差、検定の発想法、2つの標本グループからの真の母平均の推定などなど。だから、「差の検定」をメインのアイテムにもってくれば、統計学の技法の本質がものすごくよくわかる。このことに気づいたのは、前著を刊行したあとだったのだ。
また、あまり大きな声では言えないが、前著『完全独習 統計学入門』では、少し舌足らずな説明になった部分がある。その一つは、正規母集団から複数の標本を観測するときの標本平均の分布についてだ。この説明が伝わりにくいことが、大学でこれを教科書にして講義をしていて気がついた。それで、学生たちをモニターに、いろんなパターンの説明を試みて、今回の教え方を構築したのだ。新著での「福引き箱の足し算イメージ」が、現状では、最も伝わりやすい教え方のように思う。だから、前著を読んだ人も手にする価値があるはずだ。(っていうか、是非、手にして欲しい。笑)。
 「まえがき」等は、週末に刊行された頃に公開するので、今回は、もう一つだけ。
実は、このマンガの主人公・三浦晴香ちゃんのモデルは、ぼくが大ファンのアイドルなのだ。打ち合わせで、主人公をどんなキャラクターにするかを議論しているとき、「ぼくが○○のファンで」と言ったら、「じゃあ、○○をモデルにしましょう」と決まった。こんな感じ↓

自分がファンのアイドルが主役だから、がぜんやる気が出て、めちゃくちゃウキウキと仕事をした。今回ほど、本を書くのが楽しかったのも珍しい。そのアイドルが誰だかは、あえて言わないので、(本を買った上で、笑)、是非当ててみてほしい。