『マンガでやさしくわかる統計学』が刊行されました!

 ぼくの新著『マンガでやさしくわかる統計学日本能率協会マネジメントセンターが、ネット書店にも入荷され、書店にも並び始めたので、ここできちんと紹介しよう。(ちなみに、前回もぼくの新著、マンガ統計学が出ます! - hiroyukikojimaの日記で紹介しているので、こちらも参照のこと)。
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この本は、統計学の解説書だけど、マンガと解説がおおよそ半々になっている。マンガでは、「ピンチの商店街を統計学を使って復活させる」というサクセス・ストーリーを描いている。マンガのところどころに、統計学の計算が導入されているが、きちんとした解説は活字で行うようになっている。ぼくが担当したのは、マンガのストーリー作りの手伝いと、解説部分すべてだ。
全部をマンガで読みたい、という読者には不満が出るかもしれないが、ぼくはこの形式のほうが、全部マンガ、より優れていると思う。解説するジャンルによるとは思うが、数理系の解説書の場合、マンガの中に数式を入れるのは無理がある。数式が「背景」に埋まってしまうし、登場人物が吹き出しの中で数式について解説するとどうしても舌足らずになり、説明が十分ではなくなる。また、マンガの流れを断ち切ってしまう恨みがある。本書では、「スト−リーはマンガで、解説は活字で」、と役割分担をしており、それはむしろ有効に働いていると思うのだ。
今回は、本書の見所を二つほど紹介したあと、序文の一部をさらすことにしよう。
まずは、(前回に紹介したが)、本書の主人公の三浦晴香ちゃんは、ぼくがファンのとあるアイドルがモデルとなっている。右の娘だ。

そのアイドルが誰かは、(恥ずかしいので)あえていわない。ヒントはいちおう巨乳ということで。笑。ちなみに、左の男は、もう一人の主人公・数沢九十九准教授。このモデルが誰なのかはよくわからない。みんなでキャラ作りをしている際、女性のスタッフが、好みのイケメンをあげつらい、そのとき出たのは、西島秀俊とか竹野内豊とか、渋めの俳優だった。(どうゆう趣味してるねん、と心の中で笑ってた)。たぶん、マンガ家さんはこれらは参考にしなかったのじゃないかと思う。
 本書のもう一つの見所は、ぼくの統計学の前著『完全独習 統計学入門』ダイヤモンド社と相補的な関係にある、ということだ。本書はマンガだし、前著ほどに豊富な解説はしていない。カイ二乗分布とかt分布とかを使った推定は諦めた。しかし、その分、ページの余裕が出来たので、「統計的推定とは、いったいどんな思想で、何をやっているのか」について前著には書かなかった解説を導入している。とりわけ、統計的推定というのが、「確率の逆問題(観測値から母集団のパラメーターを決定する)」というものであることを明らかにし、それを「確率の順問題(通常の確率の操作)」にどうやって書き換えるのか、ということを詳しく解説している。これこそが、統計学の思想であり、本質であると思うのだ。
したがって、前著『完全独習 統計学入門』を読んでくださった方も、いや、そういう読者こそ、本書は勉強になるはずだ。
 では、以下、序文を途中までさらすことにしよう。(全部だと長すぎるので)。

統計学に強くなる・仕事に活かす

 現在、統計学に対する関心が非常に高まっています。とりわけ、ビジネスシーンでは、必須アイテムの座を築きつつあります。
 その背景には、米国の企業が、ビジネスにマーケティングという技術を導入していることがあります。これは市場の動向を科学的に探ろう、というものです。マーケティングにおいては、消費者の嗜好(プレファレンス)を見抜くことが最も大切です。マーケターたちは、統計学を使って、市場調査し、商品の企画を立て、売り込みを行うのです。その手法は、完全に統計学に立脚する科学的なものです。驚くべきことですが、消費者の動向には科学法則が存在していて、統計学を使えばそれらをあぶり出すことが可能なのです。
 そんな米国企業の戦略を見て、我が国のビジネスパーソン統計学を知りたい・わかりたい、という欲求を強くしています。ところが、残念なことに、日本語の統計学の教科書は、アカデミックに書かれたものばかりで、ビジネスへの配慮がありません。学者になりたい人が学ぶにはいいですが、ビジネスに活かそうと思うと「あさっての方向」と感じることでしょう。さらに困ったことには、これらの教科書は、高校以上の数学を前提として書かれています。したがって、学習者がこれらの教科書を手にすると、「難しい上、ピントもずれてる」という二重苦に陥りがちです。
本書は、その困難を克服するために、二つの工夫をしました。
第一の工夫は、「ストーリー・マンガを使って、ビジネスにピントを合わせる」ことです。「マンガ統計学」と題された本はこれまでもたくさんありましたが、それらはだいたい「登場人物が統計学を講義する」というもので、統計学自体のスト−リーがありません。本書はそれらとは異なり、登場人物たちが統計学を実際のビジネスに活かしていくストーリーになっています。そのビジネスも、「商店街を復活させる」という卑近でリアルな題材を選びました。
第二の工夫は、「高度な数学をイメージ図に置き換える」ことです。ページをぱらぱらめくってもらえばわかるのですが、多くのイメージ図によって、統計学の数式を図像化しています。とりわけ、推測統計の本質でありながら最も理解の難しい無限母集団を、「福引き箱」のイメージ図を使って具体化する工夫は、本書最高の「売り」です。本書がマンガを使った解説書であることが、このようなイメージ図の手法とマッチし、読者の理解を強化できる自信があります。

 実は、統計学がビジネスにリアルに利用できることは、森岡毅さんの本を読んでわかった。そして、思いっきりのけぞった。このことについては、いずれエントリーしようと思う。本書は統計学の基本を解説する本だから、森岡さんのような「マーケティングへの直接的利用」とまでは言えないけど、その発想にできるだけ近づけてあるつもり。
 それでは、当ブログ読者の皆さん、かわいい晴香ちゃんと一緒に、統計学を勉強してくださいな!