小学生向けの統計学の絵本が刊行されます!

 今日あたりから、ぼくの新著が書店に並ぶ。

宇宙人ミューとカイのかわいい統計大作戦ミネルヴァ書房という本だ。

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宇宙人統計本

この本は、小学校高学年の子供に統計グラフの読み方を勉強してもらうもの。

現在、文科省は統計教育に力を入れてて、高校で統計学が数学の単元としてほぼ必修化される。それに応じて、中学でも小学校でも統計が強化されることになっている。

 ぼく自身は、数学という教科の中で統計を教えるのは反対だ。統計学には統計学固有のロジックがあり、数学は使うけど数学とは異なる分野だからだ。例えば、物理を数学のいち単元として教えることになったら反対する人が多いのではないかと思うのに、統計についてはそんなでもないことには驚いている。

 ここでは、その話は詳しく書かないので、興味ある人はWEBRONZAで読んでほしい。

高校数学での統計学必修化は間違っている - 小島寛之|WEBRONZA - 朝日新聞社の言論サイト

Twitterでよく、(有料だからだろうけど)最後まで記事を読まないでトンチンカンな批判している人がいるけど、そういうのはいかがなものかと思う。最後まで読まないと論説の趣旨はわからんぞ。(まあ、金払う価値があるかどうかは責任もたないが。笑)。

 繰り返すと、ぼくは数学の中で統計を教えるのは良くないと思うが、統計自体は、子供の頃から親しんだほうがいいと思っている。

 ぼく自身は、30代になるまで統計には一切関心がなかった。中学1年から数学にはまって、数学が三度の飯より好きなくらいだった。でもそれは、抽象世界の数理、形而上学としての数学が大好きだったのであって、現実解析の道具としての数学には全く関心がなかった。

 統計に目覚めたのは、30代で経済学部の大学院に通うことになったときだった。その辺の事情は、次で読んでほしい。

統計学の面白さはどこにあるか - hiroyukikojima’s blog

 経済学を研究するようになって、現実を見る道具としての統計学はものすごく面白いと目覚め、また、統計学から数学を引き算したところに統計学固有の思想が封じ込められている、ということもエキサイティングに思うようになった。

 今では、統計学がとても好きで、だから何冊も統計学の教科書を書いている。その「伝道」的な仕事の一環として、今回の『宇宙人ミューとカイのかわいい統計大作戦』がある。これは、ぼくが小学生のときに読んでいたらひょっとしてぼくの統計に関する興味が180度変わってたんじゃないか、ってコンセプトで書いたのだ。

 

 いつものように、序文を公開する。実は、この本は「子供むけ」「先生向け」「保護者向け」と3種類の序文があるんだけど、今回は、「子供むけ」を引用する。

[はじめに] 

 みなさんは、数字を見るとじんましんが出ますか? 算数は嫌いですか? 

そうですか。わかります。とてもわかります。

算数のややこしい計算や、むずかしい文章問題をやらされると、「なんでこんなこと、やらなきゃならないの?」「こんなことして、何かの役に立つの?」と思うことでしょう。ただただ子供を苦しめるだけの修行を、無理強いされている、そう感じるでしょう。

 そう感じるのは仕方のないことです。

 世の中には、スポーツが得意な子供も苦手な子供もいます。音楽が上手な子供も下手な子供もいます。同じように、算数が好きな子供も嫌いな子供もいてふしぎではありません。何に対しても、好きなことでは思いっきりがんばり、嫌いなことはソコソコにこなせばいいのです。大人になったら、算数が苦手でも、決して人からとがめられたりしませんよ。

 ただ、ここでひとつ、聞いてほしいことがあります。

 みなさんは、身の回りのこと、世界のことを知るのは、きっと興味があると思います。自分が生きているこの世の中には、たくさんの面白さとふしぎさがあふれています。そういう面白いこと、ふしぎなことを知りたい、わかりたい、きっとそう感じていることでしょう。

 そういう君は、ぜひ、本書を読んでください。本書では、身の回りや世界を知るための技術がレクチャーされます。

 身の回りや世界を知るには、「数字」と「グラフ」が役に立ちます。もう少し詳しく言うと、「統計」というのが役にたつのです。

「統計」というのは、世界を「数字」と「グラフ」で捉える技術です。世界は、見た目だけでは捉えられません。見ただけだとだまされてしまうことがよくあります。そういうときこそ、「数字」と「グラフ」がものを言うのです。

 この本は、世界を「数字」と「グラフ」で捉える「統計」について解説しています。ベータ星人のミューとカイといっしょに、ベータ星の博士から「数字」と「グラフ」の見方を学んでください。そして、「統計」を使って、地球を冒険してください。

 この本を読み終えた頃にはきっと、ほんの少しだけかもしれませんが、算数とお近づきになれているかもしれませんよ。

とくに、小学生のお子さんをお持ちの当ブログの読者の皆さんに、是非、書店で手に取っていただきたい。