今回は、最近に見た映像作品2つと、最近好きになったミュージシャンのことをエントリーしようと思う。
映像作品は、アニメ作品『魔法少女まどか☆マギカ』とホラー映画『残穢』、ミュージシャンはAimerだ。
まず、『魔法少女まどか☆マギカ』から。
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観て驚いた。これはあまりに斬新なアニメ作品だった。
まず、映像が半端ない。魔女との闘いのシーンは、さながらポップアートだ。こんな絵柄で戦闘を描いた作品は他に知らない。音楽もかっこいい。
しかし、なんと言ってもすごいのは、そのストーリーだ。魔法少女と聞いてイメージするのは、当然、勧善懲悪だ。でも、この作品は、そう言った勧善懲悪とは対極にある作品だった。善と悪とがくるくる入れ替わりながら、最後の一話まで、何をしようとしているのか読めない展開になっている。こんな作品を観た小学生の少女たちの中には、トラウマになっちゃう子もいるのでは、と心配になる。製作者は大人向けに作っているのかもしれない。もちろん、受け入れることができた子どもは、大人になる過程で、作者のもくろみが次第にわかって来るだろう。
でも、テーマ自体は、ひねたものではなく、切なくて泣けるオチとなっているから、安心して最後まで観よう。
ぼくとしては、『君の名は。』で打ちのめされ(ぼくの感想は21世紀の数学原論 - hiroyukikojimaの日記にて)、最近、テレビで同じ監督の『秒速5センチメートル』でのけぞり、などと来た結果、「最近のアニメは、局所的な進化を遂げつつあるのだなあ」、という感慨が沸いてきている。宮崎アニメのときも出遅れて後悔したけど、宮崎アニメを「ある意味では」超える作品群が現れていることに、ただただ驚いている次第だ。
次の映像作品について語る前に、ミュージシャンAimerについて書き留めたい。
彼女のことを知ったのもつい最近。ときどき見かけていたけれど、アニメ『夏目友人帳』のエンディングテーマ「茜さす」をAimerが歌っている、と気づいたことが一番のきっかけになった。
ぼくは、ほんのときどき、ハスキーボイスの女性ボーカリストにはまる。最初は、ジャニス・ジョプリンだ。ジャニスは、60年代に活躍し、70年に麻薬死した。名曲が多く、今でもCMなどで使われることがある。ぼくは、ジャニスの生涯を描いたドキュメント作品を持っているけど、その映像の中のジャニスは、本当に孤独で切ない。観た印象に過ぎないけど、どこか本質的なところが壊れていて、「生きることとの摩擦」につねに苛まされているように感じる。歌うことでしか自分を保つことができず、歌うことが生きることだったのだと思う
次にはまったのは、オートマティック・ラブレターというバンドのボーカリスト、ジュリエット・シムズだ。オートマティック・ラブレターは、兄妹を中心としたバンドで、妹のジュリエットが歌詞を兄が楽曲を書いていた。残念ながら、2枚のアルバムを作って活動を休止してしまい、その後はジュリエットはソロで活動している(ようだ)。ぼくは、オートマティック・ラブレターの曲が好きなので、要するに、兄の作るエモな楽曲に惹かれる、ということだと思う。二曲ほどyoutubeにリンクを貼ろう。
(Make Up Smeared Eyes - Automatic Loveletter)https://www.youtube.com/watch?v=uAPyutYlHt0
("Story of My Life" by Automatic Loveletter)https://www.youtube.com/watch?v=SEwsa9mAaE4
そして、久々にはまったハスキーボイスのボーカリストがAimerだというわけなのだ。彼女の声は奇跡の声だと思う。生まれつきではなく、喉の病気からこういう声になったそうだが、神が奇跡を与えてくれたのでは、と思えるほどだ。本当に、切なくて、心に届く歌唱だと思う。
Aimerのアルバムの最新盤は、Radwimpsの野田さん、One Ok RockのTakaさん、凜として時雨のTKさん、Andropの内澤さんなどが楽曲を提供しており、みんなぼくの好きなバンドなので、涎がこぼれる出来となっている。でも、デビューアルバムがすごく好きだ。これは、わりとR&Bっぽい曲が多く、ぼくはR&B方面が得意でないのだけど、このアルバムにはぼくにもぐっとくる。とりあえず、二曲だけリンクを貼っておこう。
(Aimer−me me she)https://www.youtube.com/watch?v=wAPHEzDWTHQ
(Aimerー夏草に君を想う)https://www.youtube.com/watch?v=5ea6rkow0Yw
さて、最後は、ホラー映画『残穢』。
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映画は、橋本愛が演じる女子大生が住むマンションの部屋で起きる心霊現象から始まる。女子大生はその様子を、読者投稿から実話幽霊小説を書いている作家に手紙で知らせる。作家を演じているのは、竹内結子さんだ。女子大生と作家が、心霊現象を探るうち、二つのことが明らかになる。一つは、これらの現象は古くに遡れること。もう一つは、これらの現象が広がりを持っていること。物語は、過去を探る旅となり、意外な真実が明らかになっていくのだ。
原作は読んでいないので確かなことは言えないが、少なくとも映画は、「映像だから可能になる」ような物語を組みたてている。映像が過去に遡ると、ニュース・フィルムの荒さとか、写真の古びかたとか、本当に丁寧な検証の上で作られていて感心する。「どっかんどっかん」なショッキング・ホラー映画が大好きな人には、「なんじゃこれ」になるかもしれないけど、かなりな数のホラー映画を観たぼくには、逆に、とても新鮮で、とても斬新に感じる映画だった。小野さんの構想力はやっぱり天才的なあ、と拍手喝采。
『魔法少女まどか☆マギカ』にしても、『残穢』にしても、ぼくの社会学者としての感覚に訴えかけてくる作品だった。
ぼくは、学部は理系(数学)、大学院は文系(経済学)なので、理文両方を経験している。その立場から言うと、理系と文系とでは、拠って立つところが違う気がしている。もちろん、学者によって考えが違うのは当然なので、今から書くことは、あくまで小島個人の感覚である。
ぼくは、理系というのは、「単純な世界観」を追求しているように思える。使う数学がどんなにややこしいものでも、難しいものでも、「世界を数式で表せる」ということ自体、シンプルなことである。物質世界の驚きとは、「単純な数式で記述できる」ということなんだと思う。
でも、文系はそうではない。文系で重要なことは、「社会の複雑さを複雑なままに受け入れる」ということではないか、と思えてきている。社会を単純化して解析することは決して間違ったことではないけど、その際、用心が必要であろう。一つは、「見出された結論は、社会の一つの側面を切り取っているにすぎず、全体の中では誤謬である可能性がある」という方法論的用心。第二は、「単純化の際に、あるカテゴリーの人間を冒涜している可能性を忘れず、痛みを持って単純化する」という倫理的用心だ。経済学をやってるお前が言うな、と揶揄されるかもしれないけど、それがぼくのたどり着いた最近の感覚なのだ。『まどマギ』と『残穢』は、そんなぼくの感覚にマッチする作品だった。