センの喩え話

アマルティア・センが、結果の平等だけでなく、
選択肢の自由も大事、ということを論じる上で出した例に
次のものがある。

E=Eat、N=Not Eatとする。このとき、(選択、選択肢)という順序対において、
(N,{N})というのが、飢餓。
(N,{E, N})というのが、断食。
帰結主義ではこれが区別できないんだね。帰結だけなら両方Nだから。
うーん、インド出身ならではの喩えだ。

で、ぼくは、これの応用編を考えた。

(E,{E, N})というのが、肥満。
(E,{E})というのが、過食症
(E,{N})というのが、医者のいうことをきかない患者。

先日、かかりつけの女医に1年で3キロのダイエットを宣告された。
とりわけ深夜の飲酒は禁じられた。
「がんばってるんですけど、なかなかやせないんです」
というと、彼女は「わかります」と頷いた。たぶん年上だが、
彼女はなかなかの美人である。
「ちょっと痩せても週末とかに一気に戻るんです」
というと、彼女は、「とてもよくわかります」と頷く。
そして、ぼくの泣き言をじっくりとじっくりと聞いた上で、にっこり、
として、こういった。
「それじゃこうしましょう。2ヶ月に500グラムずつ痩せるのでいいです」
「そ、そうですか!」
と顔を輝かせたが、ぼくは、彼女の罠をすぐさま見破った。
だてに長く数学をやってきたわけじゃないぜ。

そんなこんなの心理的なダメージのせいか、その日の深夜、ワインのがぶ飲みを
始めてしまった。ワインだけでは飲み足りなくて、そのあとグラッパもがぶがぶ飲んでいた。
翌朝は起きてもまだ酔っぱらった状態のままだった。
1限のマクロ経済学の講義は、ケインズの貨幣理論という難所だったが、
何年に一度できるかどうかという、ハイテンションなそれでいてディープな
最高の講義となった。

(E,{N})というのが、医者のいうことをきかない患者。