ホラー映画で殺される順を当てる方法

さて、このところ、本のキャンペーンということもあって、ずっと真面目な話や泣ける話を書いてきたので、その反動から不謹慎な話を書きたくなってしまった。というわけで今日は、オタク系おやじモード全開で行く。

 実は、ぼくは、こう見えても(どう見えても??)かなりホラー映画好きである。
いや、20代前半までは、全く興味がなく、どちらかというと苦手だった。が、20代半ばに、「ホラー師匠」にあたる人と出会い、その人の指南によって目覚めてしまった。つまり、「見方」「見所」がわかったのだ。彼が持ち込んで来たのは、カーペンターの『物体X』、『ハローウィンシリーズ1,2,3』、クローネンバーグの『ビデオドローム』などだった。どれもはらはらどきどきで、めちゃくちゃ面白かった。とりわけ『ハローウィン3』は、彼が持ち込んできたビデオが洋版で翻訳なしのものだったので、物語の進行とか伏線とかがいまいち掴めずにみてたので、なおさら恐かった。これほどひどいホラー映画は、その後しらない。悪夢そのものだった。(これはショック映像がヒドイということではない。そういうものならむしろ星の数ほどある。つまり、精神的にヤバイのである)。それから、『ビデオドローム』は、これも(不法?)海賊版ビデオで観たので、そのストーリーとシンクロしてしまって、我が部屋そのものがビデオドローム化したかのようで、悪夢だった。

 ホラー映画で何より楽しめるのは、必ず美女が出てくる、ということだ。例えば、『ハローウィン』には、その後ホラークイーンの名を冠されることになるジェーミー・リー・カーチェスが主演している。(『ビデオドローム』のほうは、といえば、我らが青春のバンクバンド・ブロンディのボーカリスト、デビィ・ハリーが重要な役で出演している) 。

 ホラー映画の「美女性」という性質は、邦画でも踏襲されている。例えば、清水崇監督の名作『呪怨』の主演は美人女優めじろおしである。例えば、映画版では、奥菜恵伊東美咲市川由衣といった、もうこれ以上ないくらいのキャスティングである。また、黒沢清監督の名作『回路』には、デビューしたての麻生久美子小雪が出ていた。とりわけ、小雪の大学院生役はあまりにすばらしかった。

 そういう美女系ホラー映画の巨匠といえば、イタリア人の監督・ダリオ・アルジェントだ。
アルジェントの映画にめぐりあった頃、ぼくはすでにホラー映画の「美女性」ということに目が肥えきっていたといっていい。だから、名作『サスペリア』でも名作『フェノミナ』でも、ほとんど最初のほうのうちに、登場人物たちがどんな順序で殺されていくか、それを正確に当てることができた。タネは簡単。
 「美少女から順に殺される」
ってことだ。
どうして登場人物の「美少女度の順位」がわかるか、というと、それはたぶんアルジェントと好みがいっしょだからなのだろう。 『サスペリア』の主演の子はそんなでもないのだが、『フェノミナ』の主演のジェニファー・コネリーは、ぼくの中では『みつばちのささやき』( これはホラー映画ではないよ)のアナ・トレントと並んでマイベスト美少女である。『フェノミナ』は、最初一人で観に行ったのだが、ジェニファーをもう一度じっくり観たくて、つれあいを「だいじょぶだから、恐くないから」とだましてもう一度観に行った。(見終えたあとつれあいが、恐くないなんて嘘じゃないか、と怒るのなんの)。そのとき、同じ列に座っていた男子が、超余裕で両足を前の椅子にかけた形で座ってたので、このにいちゃん大丈夫かなあ、と観察してたら、案の定、最初のほうの一番恐い「ふいうち」で、どかん!と椅子を蹴って、転がり落ちたのは笑った。ちなみに、『フェノミナ』と『ハローウィン』には、ドナルド・プレザンスというこれまたホラーキングを冠されたぼくの大好きな男優が共通に助演している。

 もちろんどんなことにも例外がある。この「美少女から順に殺される」 という推理が全く通用しなかったのは、『エルム街の悪夢』の2だか3だかだ。だって、「男の子」が次々殺されていくんだもん。あの監督、たぶん、そっちの嗜好の人なのだろう。(監督が違うとはいえ、『エルム街の悪夢1』においても、主演女優は、個性的ではあるがぼくの好みの「美少女」ではなかったから、そもそもこのシリーズはホラー映画の常道をわざとはずしているのだろう)。当時は男の子に対する審美眼は全くなかったから、「男子系」ホラーは、かなり意表を突かれた展開だった。しかし、V6岡田准一とトークして以来、ジャニに目覚め、男の子系にも多少自信がついてきてもいる。実際、(ジャニではないが)小栗くんや(ジャニの)ヘイセイセブンの山田くんにつれあいより早く注目したのは、何を隠そうこのぼくである。「美男子性」のホラー・『エルム街』、もう一度見ると今度は当てられるのかも。