パラドクス本のこと、新刊のこと
新著『大悪魔との算数決戦』技術評論社についての紹介は、前回、新著『大悪魔との算数決戦』が出ました! - hiroyukikojimaの日記に書いた。今回は、さらに追い打ちをかけたいと思う。この本は、実は、次のようなかたにお勧めなのである。
1.小学生や中学生の親御さんで、子どもの算数・数学嫌いがなんとかならないか、と悩んでいるかた。
2.受験生を抱えた親御さんで、なんとか子どもさんの算数や数学への苦手意識を克服させたい、と思っているかた。
3.子どもさんが夏休みの読書感想文の課題をこなすのに、なにかいい本はないかな、とお探しのかた。
4.小中学校の算数・数学の先生がたで、授業の中で子供たちとコミュニケーションをとるのに使える数学ネタが欲しい、と思っている方々。
これらの方々には、是非、本書をお試しいただきたい。ただし、算数自体を教えるものではないので、勘違いなさらぬように。ピーマン嫌いに生のピーマンを与えたってダメでしょう?
- 作者: 小島寛之著,大高郁子絵
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2012/06/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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(章) : (章タイトル) : (敵キャラ) :(パラドクス) の順
第1話 なぞのテレポート現象 : 不明 : 平均のパラドクス
第2話 永久の町 :マクスウエルの悪魔 : 第1種永久機関、第2種永久機関
第3話 とんでも文書 : いんちき教祖 : 方位(東西南北)のパラドクス
第4話 横暴なゲーム・キャラ :ペアーニョ将軍 : 数学的帰納法のパラドクス
第5話 双子のユウレイ :双子のユウレイ : 確率のパラドクス、量子力学、無限集合のパラドクス
第6話 仮面の猛獣使い:仮面の猛獣使い :ゲーム理論の逆向き推論、囚人のジレンマ、予期せぬ死刑執行日
第7話 題名のない物語:いじわるな魔女 : 自己言及のパラドクス
第8話 パラドクスの城 :パラドクス大悪魔 : 実数のパラドクス
(以下、多少のネタばれがあるので、ほんとにこの本を買う気があって、ネタを知らずに手にしたい人はこの段落をスキップしてください)。改訂にあたって、新規投入したのは、「双子のユウレイ」「仮面の猛獣使い」「題名のない物語」の3つであり、これらが自信作でお勧めの物語。「双子のユウレイ」は、量子力学における「粒子の自己同一性」を扱ったもので、確率論の応用として大好きだったこれをなんとか物語に仕立てた。「仮面の猛獣使い」は、ゲーム理論やサーチ理論における逆向き推論をパズル化して、それに有名なパラドクスを和えた物語。数学のパラドクスに通じている人も、ひょっとするとこのネタは知らないかもしれないのでお勧めである。「題名のない物語」は、自己言及の論理パズルを物語化したもの。ネタは、論理パズルの巨匠である数学者レイモンド・スマリヤンの『数学パズル 美女か野獣か?』からとった。自分でいうのもなんだが、こういう使い方はみごとだと褒めてほしいものだ。スマリヤンの本は、本当に楽しい内容で、論理演算子の意味と使い方を学びながら、だんだんゲーデル的な世界に進んでいくパズル本。ぼくの新著『大悪魔との算数決戦』技術評論社を読んだ子どもが、「ああ、面白かった」と言った際には、子どもに買い与えたらいいと思う。(先に与えると、アレルギーを発症するかもしれないので、要注意。笑い)。
いずれにしても、このぼくの絵本は、大人が子どもに与え、この本を通じて互いにコミュニケーションをしていただけたら、つまり、いっしょにパラドクスの不思議感を共有していただければ、それが一番本望な読まれかたなのだ。
さて、来週の中頃に(7月4日頃)、ぼくの次の新著『数学入門』ちくま新書、が刊行される。
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/07/01
- メディア: 新書
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これについては、発売された頃に、詳しく紹介(売り込み)をするので、乞うご期待ということで。
数学パズル 美女か野獣か?―楽しみながらゲーデルの謎にせまる
- 作者: レイモンドスマリヤン,Raymond Smullyan,阿部剛久
- 出版社/メーカー: 森北出版
- 発売日: 1996/03/01
- メディア: 単行本
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