下北沢でトリコ(Tricot)を観てきた。

今日は、楽しみにしていた、下北沢クラブQueでのトリコ(Tricot)のライブに行ってきた。
下北沢クラブQueはたぶん、20年弱ぶりだと思う。というか、行ったのは一回だけで、今日で二回目だった。
20年ぐらい前に行ったのは、記憶では、フィッシュマンズが出る何かのイベントだった。彼らは、30分強にも及ぶ演奏時間の「ロング・シーズン」をちょうど出した頃で、たぶん、Queのライブでは、これを丸ごと演奏したような気がする。ボーカルの佐藤さんが、この数年あとに突然の死を遂げることを考えると、なんか思い出とともに悲しさがこみ上げてくる。
それ以来、久々のこのライブハウスだった。
トリコのこのライブをどうしても観たかったのは、Komakiさんが脱退したあとのドラムはどんな感じになるか、ということに興味があったからだ。赤坂ブリッツで、Tricotのワンマンライブを観てきた。 - hiroyukikojimaの日記に書いたけど、トリコの変拍子な音楽にはKomakiさんのドラミングは大きな存在感を持っており、彼がいなくなったらどうなるかな、と心配だったのだ。
中心的なサポートドラマーは、デトロイト7というバンドの山口美代子さんという人になったみたいだった。これで、サポートも含めて、完全なガールズバンドになったわけで、「なるほどね」という感慨があった。それで、今日のライブのチケットを入手し、山口美代子さんのドラミングのお手並み拝見、という気分になっていたのだ。
ところが、ところが、今日のドラマーが山口さんでないとツィッターで発表されたときにはのけぞった。スケジュールの関係かもしれないが、別の女性ドラマーになったのであった。それも、一度ライブを観たことのある人だった。それはフリップ(Flip)というバンドのユウミさんというドラマーだった。フリップは、エコシステムというバンドのライブを観たくて、渋谷のライブハウスに行ったとき、そのトリのバンドとして演奏した(バンド・エコシステムをクアトロで観てきた - hiroyukikojimaの日記)。そのとき、ユウミさんを観たのである。ドラミングがかっこいいばかりではなく、とんでもなく美人なドラマーだというのが、ぼくの初見の感想だった。美人ドラマー度では、スキャンダルのリナさんに匹敵すると思う。そのユウミさんがドラマーに抜擢された、ということで、ぼくの期待は一気に数倍になった。
そして、今日のライブである。注目点は、ユウミさんが、あの変拍子、激しいリズムの切り替えをどう叩くかな、ということだった。結果は期待のさらに数倍になった。フリップとは異なるジャンルの曲なので、そのドラミングのみごとさには惚れ直した。ぼくは音楽の技術的なことはよくわからないので、いいかげんな感想で言うが、Komakiさんとは異なるグルーブ感(リズム感)をもってらっしゃると思う。それが新鮮で、また、かっこよく感じた。とりわけ、名曲「おちゃんせんすぅす」でのドラミングは、彼女の個性が出ていてすばらしかった。
これなら、トリコの今後も心配ないかもしれない。既存の曲を上手に叩ける(しかも女性の)ドラマーが存在することは証明された。あとは、曲作りで、ドラミングのアイデアをこれまで同様に(あるいはそれ以上に)捻出できるか、ということである。まあ、これについてもあんまり心配はしていない。彼女たちには、挑戦し続ける気概が膨らみ続けているから。
しかし、それにしても、Queでのぎゅうぎゅう満員状態には参った。客が暴れる場所ときちんと聞きたい客との隔たりが確保されず、落ち着いて音楽を聴くことができなかった。「かかってこいや〜」とか言われても、年寄りにはとてもかかっていけないっすよ。こんなぎゅうぎゅうは、ネッズ・アトミック・ダスドビンを観たときと、レィディオヘッドをブリッツで観たとき以来だ。ネッズ・アトミック・ダスドビンを観たときは、周りがちっちゃい女子中生・女子高生ばかりだったので、なんだかミルクの匂いが漂っていて(笑い)、悪い気はしなかったが、レィディオヘッドのときは、でかい野郎ばかりが暴れていて、生きた心地がしなかった。今日は後者に近かった。いくらトリコが好きでも、こういうライブには二度といかないと思う。というか、無理。
今日は、ボーカルの中嶋イッキュウさんが、鬼太郎というか、サダコというか、髪で顔をほとんど隠してのボーカルだったので、笑った。でも、終わり近くに、活動休止を宣言した今日の主役のバンドに対して、エールを贈りながら、感極まって泣いてしまったのが印象的だった。今日は、二つのバンドの交差点なんだろうと思う。ぼくも、(バンドではないけど)、こういう交差点に何度もめぐり合わせた。人生はいろいろだし、どんな道を選ぶのもそれは何かに導かれてのことだと思う。ぼくは、イッキュウさんと一緒に、いろいろな想いと感慨が去来して、胸が詰まってしまった。クリエイターは、何度もこういう交差点に立ち、右と左に別れていく。そして、ずいぶんあとになって、遠い昔の交差点を振り返るとき、自分がどんなにたくさんの奇跡の幸運に出会い、どんなに人々の情け深い支えの中で進んでこれたかを思い知るものだ。それは驚嘆すべきことであり、切ないことでもある。トリコは、今以上に、斬新な音楽の道を歩んで欲しいと思う。そんで、年寄りにも配慮した箱を選んで欲しいと思う。
せっかくだから、トリコとフリップと両バンドの入ったコンピ・アルバムにリンクを張っておこう。

And Your Birds Can Sing

And Your Birds Can Sing

  • アーティスト: V.A.,FLiP,FOUR GET ME A NOTS,Kenco Yokoyama,SCOTLAND GIRL,UNLIMITS,tricot
  • 出版社/メーカー: ピザ・オブ・デス・レコーズ
  • 発売日: 2013/12/18
  • メディア: CD
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これは、ガールズ・ポップのコンピなんだけど、(実は、フェイクのバンドが一つ混入しているが、笑)、どれもなかなか良い曲揃いの名アルバムだと思う。