もうすぐ、ぼくの論理学の本が刊行されます!

 明けましておめでとうございます。昨年は、当ブログをご愛読くださりありがとうございました。
今年の初エントリーは、もうすぐ、1月11日に刊行されるぼくの新著の紹介をさせていただきましょう。(一部の書店では既に販売されているようです)。
 本のタイトルは、小島寛之『証明と論理に強くなる〜論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで』技術評論社。これは、ぼくの長年の論理学との格闘から生まれた本。ある意味では、宿願とも言える刊行である。

刊行までまだ10日ほどあるので、今回は、目次だけをさらすこととしよう。次のようになっている。

『証明と論理に強くなる〜論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで』目次
  
序章 「証明」と「論理」を学ぶと何の役に立つのか?
  <第1部 論理式に慣れよう>
第1章 論理式を読めるようになる
第2章 論理式の真偽は考える世界で変わる
第3章 大学入試・公務員試験を解いてみよう
  <第2部 証明するとは何をすることか>
第4章 言語と推論
第5章 「等しい」とはどういうことか?
第6章 「かつ」「または」「ならば」「でない」の推論規則
第7章 「証明できる」と「正しい」の関係
第8章 述語論理を読めるようになる
  <第3部 自然数を舞台に公理系を学ぶ>
第9章 1+1=2を証明しよう
第10章 ∀と∃を操作しよう
第11章 数学的帰納法とはどんな原理か
  <第4部 ゲーデルの定理の予告編で終わる>
第12章 ゲーデルの定理、その予告編
  <補足>
A. 「命題論理の自然演繹の完全性定理」の証明
B. 「等号の演繹システムの完全性定理」の証明
C.  ニセ自然数はメカ自然数Qのモデルであることの確認
D. 「ホフスタッターの定理」の証明

少しだけ追加の説明をしよう。
本書は、ぼく自身の数理論理に関する自問自答を執筆した本、ということができる。
詳しくはあとがきを読んで欲しいが、ぼくは人生の中のいくつかの局面で、数理論理を勉強しなければならないはめになった。その中で、最も重要で、最も追い詰められたのが、塾で中高生に数学を教えているときだった。
中学生にユークリッド幾何を教えるとき、ちゃんとわかってもらおうとすれば、公理とか推論規則とかに抵触せざるを得ない。そうなると、「やっていい推論は何か」とか、「証明された定理が正しい、とはどういうことか」とかが問題になる。これらに、胸を張って答えるために数理論理の勉強が不可欠になったのである。
それ以外の単元も、数理論理と無縁ではない。証明問題の解法を教える際、「背理法」とか「数学的帰納法」とかが出てくる。このとき、鋭い生徒からは、「背理法は、どうして正しい論法なのか」とか、「数学的帰納法とはいったい何をやっているのか」とか、いじわるな質問が飛んでくる。教師の良心として、逃げずにごまかさずに、誠実に解答をしたい。そうなると、数理論理に取り組まざるを得ない。
このように、本書は、「数学講師としてのぼくの魂が書かせた本」と言える。だから、本書が最もフィットするのは、中高生に数学を教えていらっしゃる先生がたであろうと思う。
 塾講師時代に、幸運にも、同僚に数理論理の研究者がいた。その人が、ゲンツェンのシークエント計算とか自然演繹とかを高校生に向けてレクチャーしていたので、ぼくも講義にもぐらせてもらい、だいぶ下地ができた。でも、その直後に、経済学の大学院に入学したので、数理論理から遠のくことになってしまった。大学院でも、実は、松井彰彦先生のゲーム理論セミナーで、論理学の本の輪読に参加したことがあった。今思えば、とても効率的な学習の場だったのだけど、ほんちゃんの経済学の勉強を優先したため、たいして身につかなく、本当にもったいないことをした。
 かなり本格的に数理論理の教科書や専門書と取り組んだのは、拙著『数学的推論が世界を変える』NHK出版新書の企画が持ち上がったときだった(詳しくは、新著『数学的推論が世界を変える〜金融・ゲーム・コンピューター』が出ました! - hiroyukikojimaの日記参照のこと)。この本は、金融、コンピューター、ゲーム理論、数理論理をクロスオーバーさせるエキサイティングな本で、ぼくの経済学上の興味を結晶させたものだった。

本を書くからには、数理論理について、かなりきちんと理解しなければいけない。それこそ、数理論理を組み入れた経済学の論文が書けるぐらいまで、ちゃんと吸収したい。そういう思いで勉強を行った。
 今回は、その勉強をまとめる形として、本書を執筆した。本書は、さきほども言ったが、経済学者としてではなく、数学の教師として、あるいは、数学エッセイストとして、(数理論理の専門家や学徒以外の)多くの一般の人が証明や論理について疑問に思っているであろうことに答えることを志したのである。刊行日が近くなったら、ごり押しの宣伝をする予定なので、お楽しみに。